演 目
family

観劇日時/08.6.10.
劇団名/劇団スタンド・バイ
公演回数/vol.40
作・演出/高崎秀之 照明/清水利恭 音響/藤平美保子
舞台監督/吉田慎一 イラスト/徳永健
宣伝美術/CLOUD-BOX 舞台製作/オフイスTH2
制作/劇団スタンド・バイ制作部
劇場名/東京・中野・MOMO

オーバーアクションの家庭劇

 3年前に交通事故で両親と婚約者を失った28歳の女(=犬飼奈都子)は衝撃でその前後の記憶を失っている。大きな和風の家での一人暮らしである。一見気楽で気丈で呑気な風だから、そういう心の傷は見えない。
そこへ別に住んでいた3歳下の弟(=晴野青児)が、経済的な理由から荷物を押しつけて転がり込んでくる。不承不承の姉。そこへまた見知らぬ一家4人(=父・渋谷毅/母・石井淳子/姉・島袋由香理/弟・菱沼拓)が転がり込んでくる。
普通こういう場合、この女はだんぜん拒否するのが観客の常識であろう。彼女は何か弱みでもあるかのように、ずるずると容認してしまう。
弟の方はむしろ積極的にと言った方が良さそうなくらいに受け入れる。後で事情が分かるのだが、この時点ではあまりにも理不尽な状況を易々と容認しているようなこの女の意識がじれったくて大いにリアリテイを欠き、特にこの一家のオーバーアクションは、観客の低次元に迎合するようで強い抵抗感がある。
さらに事態は、この家族の親族(=叔母・小川章子/姪・遠藤よし子)や、女の叔母(=持田尚美)が見合いだと言って知り合いの若い男(=加藤大輔)を連れて来て、この男も異常なオーバーアクション。だが観客は結構素直に笑って観ている。そしてさらにこの見合い男に恨みを持つ近所のオヤジ(=高崎秀之)まで暴れこむ。
このようにストーリィを書けば、それなりに面白いのだが、問題は後半に至ってこの一家が、主人公の女の婚約者の遺族で、意図的に彼女の慰労のために仕組んだことが分かるまでの展開が不自然過ぎるし、オーバーアクションが鼻について白けるのだ。
母親の石井淳子のとぼけた優しさと、叔母の持田尚美のタイミングの良い受け答えが、この女の自分勝手な出しゃばり気分を実にうまく表して秀逸である。
この客席60位の小劇場は、普通の小劇場のようにビルの一室を使うのではなく、劇場として独立して建てられたものだから実に機能的で理想的だ。住宅街の一隅でこのような演目で、往時の映画の三番館のような存在感を示しているのだろうが、演劇は映画と違って猛烈に金が掛かるから入場料も当然高くなって大変であろうと想像する。
良い芝居を創ってほしいと思う。