演 目
I my me mine
観劇日時/08.5.24.
劇団名/theater Nevel
公演回数/第1回公演
脚本・演出/Tr.1 「i」  tao
Tr.2 「In my arm In my brain 」 長谷周作
      Tr.3 「From me to you 」 白川勝裕
舞台監督/南佳菜 音響/tao
照明/伊藤裕幸 舞台美術/田村明美(劇工舎ルート)
劇場名/旭川・シアターコア

抽象化された若者の心象風景

 もう若くもない男・創司(=長谷周作)は、一種の自閉症気味であり、引き篭りの日常の中で図書館に通ってマンガを読むだけのニートであるらしい。パンフレットには空想家と位置付けられている。
彼の部屋には若い美女アイ(=菅原円香)がいるのだが、彼女は常に椅子に座っていて、「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」そして彼が落ち込んだときには「大丈夫、大丈夫」と言うだけで、立ち上がりもしない。そうなのだ、彼女はおそらく彼の妄想の中か、幻想の中の女なのだろう。
彼の真摯な友人・燈田(=白川勝裕)は塾の教師と家庭教師をやっているのだが、これも一種のフリーターだ。
彼の教え子・伊織(=加藤さつき)は高校生だが、父の死後、彼女の将来を案じた母親(=増山瑞穂)は、信頼を寄せる燈田との結婚を勧める。期待しながらも戸惑う燈田……、燈田には兄のような感情しか持たない伊織……
伊織は図書館へ通う創司を公園で見初める。一途に創司を慕う伊織。それを知った燈田は真摯に二人の仲を取り持とうとする。アイの存在を知って愕然とする伊織。しかし燈田は何かを感じる。
最後に創司は自死し伊織の悲劇も終わるのだが、二つのことを感じた。
一つは、この燈田の際限のない気の良さである。かなり現実離れをしている。だからフリーターでしか生きられないのかも知れないが、歯がゆさも感じられる。伊織もその母親も、やっぱり現実離れの感が強すぎる。意識してそういう設定をしたのだろうが、ちょっと引く。
もう一つはまるで映画のようにシーンがくるくると変わって目まぐるしいことだ。わずか一言の台詞ですぐシーンが変ったり、何の台詞もなく二人の雰囲気だけでシーンが変ったりする。
舞台は、上手に創司の部屋、下手に伊織の部屋、そして中央に金木犀の大木とその前に半円周のベンチという三箇所のシーンが造られているから、それが次々と変化するのがマンガの駒割りのようで、忙しい。
「Tr.2」というのは、後日談なのだが必ずしも前半を受け継いでいるわけではない。人物とキャラクターだけを引き継いで新しい物語を創ろうとしたのだろうか? 意図は面白いのだが完成度が低く蛇足であった。