演 目
西の人気男
観劇日時/08.5.17.
劇団名/北翔大学短期大学部人間総合学科・舞台芸術系
公演回数/4期生 中間公演
作/ジョン・M・シング 翻訳/松村みね子 演出/森一生
スタッフ/学生たち 出演/学生たち
劇場名/ポルトホール

真摯に創った近代古典劇

 反道徳的な物語であり暗い話であるが、最近際立って衝撃の強い舞台が少ないことを考えると、この芝居は相当に過激な思想の表現でありインパクトの強い舞台であった。
生きる意味を見失ったような100年前のアイルランドの僻村に住む居酒屋の娘。そして父親と村人たち。彼女は父の決めた冴えない男とやがて結婚しなければならない。
そこへ突然現れたイケメンの若い男。彼は西の国で犯した父親殺しの罪で追われていると自称する。一目惚れした彼女は、とっさに彼を庇って匿うことを決める。
背徳の匂いのする二枚目で、優れた運動神経を持つ彼はやがて村中の女たちの人気者になり、女たちの取り合いとなり、ますます酒場の娘を昂らせる。
殺したはずの父親が現れ、彼の魅力は半減する。父親に連れられて去る男……元に戻った彼女は暗く何もない酒場のテーブルにうつ伏す。
最初、突然、男が現れたときの反応が余りにも現実離れしているように感じられ、リアリティがないように思われたのだが、おそらく閉塞化されていた当時の現地ではありうる想定であり、また心理の一種のメタファーとして考えれば、彼女の反応は意味のある思考と行動でもあろうか。
全体に演劇を勉強中の学生とは思えぬほどの完成度の高さを示し、感動的な舞台を創ったようだ。
超リアルな舞台装置は、陰鬱な20世紀初頭の寒村の空気を良く醸し出していたのだが、ドアを開閉する度に壁面が揺れるのが気になった。