演 目
映画/実録・連合赤軍あさま山荘への道程
観劇日時/08.5.5.
制作/若松プロダクション・スコーレ株式会社
プロデューサー/尾崎宗子・大友麻子
企画・構成/若松孝二・掛川正幸
脚本/若松孝二・掛川正幸・大友麻子
音楽/ジム・オルーク 撮影/辻智彦・戸田義久 撮影助手/西岡徹
美術/伊藤ゲン 照明/大久保礼司 照明助手/高橋拓
録音/久保田幸雄 録音助手/谷口雄一郎
効果/帆苅幸雄
助監督/井上亮太・河野建治・千田孝一・福士織絵・花木英里・清水雅美・纐纈春樹
スチール/掛川正幸 キャステイング/小林良二
ナレーション/原田芳雄
監督/若松孝二
劇場名/シアター・キノ

人間心理の不可思議

 戦後思想史に愕然とする行動を起こし、その後の若い人たちの思想と行動に大きなブレーキを掛けた一連の事件というか、震撼させた彼らの行動の顛末が実録として映画になった。
出演者は全員、若手の役者たちだが、一般的にはほとんど知名度のない人たちだ。その役者たちが実在の関係者の本名で演じてリアリテイのある実録だ。
72年2月、日本中が3日間TVに釘付けになったことは僕もリアルタイムで鮮明に記憶している。だがその時の印象は狂っているという感じであり、一般的にもそういう感じ方が強かったようであった。確かに現れた行動だけをみればそういう結果になるのだろうが、その原因は何だったのだろうか? という疑問はずっと潜在していた。
この映画を観るまでもなく、それは当時の反動化する政治情勢に対する危機感を持った若い活動家たちの革命意識の先鋭化であるというのが発端である。問題はなぜ、それが追い詰められて、総括という名の同志殺しとして暴走化したのかという、人間のありようの不可思議さである。
それはこの映画を観ても分らない。ただ事実の裏側を確認したという感じだ。分厚なパンフレットを買ったのでこれからじっくりと読んでいくしかないのであろう。
二つのことを感じた。一つは、このパンフレットにも書いてあるのだが、当時の体制がこのシナリオを書き、反体制を悪と規定して完全に閉じ込めようとして、それが成功し、その後の活動・運動を再起不能の状態に殲滅させたこと。
現在の学生たちにも、この映画の中の学生たちのモチーフが現れないほど、衝撃が強く現在にまで影響しているのではないのか? とさえ思う。
二つ目には、それと矛盾するようだが、3時間半の長丁場の一日3回の上演、僕が観たのはゴールデンウイークのど真ん中の午後だったが、超満員の客席は同世代の中年から初老の観客よりも20代30代と思しき若い観客が圧倒的に多かったという意外な事実。
そして今、このスタッフ・キャストの連名を書き出していて気が付いたのだが、キャストは写真が出ているので若い人たちであることは分るが、おそらく大勢のスタッフたちも若い人たちであろうと思われる。彼らが何を考えているのだろうか? 気になるのだった。