演 目
腐 食
観劇日時/08.3.26.
劇団名/Theater・ラグ・203
Wednesday Theater
公演回数/Vol.1(再演)
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響オペレーター/田中玲枝 照明オペレーター/平井伸之 宣伝美術/久保田さゆり

本質の分らない強かさ

 この芝居、三人の役者の出演でおそらく10回以上観ていると思う。つまり同じ戯曲の同じ芝居を、三人三様の表現で観ているわけだ。
その都度、僕はこの芝居の本質を見極めてはいないのではないのか? という焦慮に苛まれる。なかなか一筋縄では捉えられない深さを持つっているという感じがしてくるのだ。
初めのころは、それを主に表現技術の問題として捉えた。一人芝居の表現方法だ。
自分の主観だけを一方的に述べるだけの第一の方法。架空の相手役とのダイアローグで進める第二の方法。そして一人何役をも兼ねて劇的展開を進める第三の方法……以下その併用やバリエーション的方法。
だが一人芝居の中でもやや弱いと僕が規定した方法論で演じた今回の村松自身の演技が最も強くしかもこの戯曲の本質を捉えて印象が強いと感じられるのである。それは何故なんだろう?
妻の裏切りを知って即時、殺してしまった平凡な銀行員は、進行する精神の腐食の終わりを早めてやるだけだから、別に罪ではない、という論理で殺人を重ねる。一線を越えることによって自分の精神も解放され、次第に殺人の快感から逃れられなくもなる。
人間が生きているということは同時に精神が腐食していく、ということの意味の解釈、この死刑囚が処刑寸前に「オレは許されるんだろうか」という逆転志向……
やっぱり僕はこの深さに迫りきれない焦りを観るたびに強く募らせるのだ。凄い芝居だと思わざるを得ないし、何度も観たくなる芝居なのだ。



 3月の推薦舞台 

やっぱり今月も『腐食』を挙げたい。

☆ Ojimaからの手紙    札幌北陵高校演激部

☆ 春のノクターン        劇団 TPS

☆ 腐食        Theater・ラグ・203