演 目
I DOOL
観劇日時/08.3.9.
劇団名/RUSH!!
公演回数/第10回
脚本・演出/明(高橋・改め)逸人 照明/相馬寛之
音響/石嶋南絵 パンフレット/まさよ&オギ
制作/仁科由香・谷口絵里子・オギ・竹野双葉
企画・制作/RUSH!!
劇場名/BLOCH

小さな村が世界を象徴する

 嫁川に掛かる橋が唯一の出入り口である寒村「乙梨村」。この小さな診療所に若い女医が着任した。だが、この診療所は村人たちが夜毎集まって酒を飲みまるで居酒屋のようだ。駐在の巡査も村出身の看護師も一緒になって騒いでいる。
この村では病気も怪我も、カミサマと称する祈祷師がすべてを仕切って治療するため診療所は開店休業状態だ。
ある静かな夜、一人蟄居する女医の許へ一人の少女が蹌踉と現れる。駐在と同居しているこの少女は、駐在に暴行虐待を受けているらしい。女医は極秘裏に少女を匿って治療を始める。
村人たちも知ってか知らずか見て見ぬ振りをする。狂乱となった駐在は少女を探し求めるが、誰もがそ知らぬ顔をする。
存在意義を否定された女医は、少女を保護するためもあって、乙梨村からの脱出を試みるが、生憎の豪雨のために橋が流され診療所へ戻らざるを得ない。
なぜか少女は駐在の許へと帰る。仕返しが怖かったのか?女医の説得にも頑なに首を横に振る少女……
進退窮まった女医は、偶然に前任者の医師の残した日誌を見る。妻の療養を兼ねて着任した前任者が女医と全く同じ経過を辿ったことに気付く。
土俗的な狂気ともいえるカナガリ祭りの夜、大勢のけが人が運び込まれる。その中には駐在もいて、しかも彼は混乱にまぎれて妊娠した少女に駐在のピストルで撃たれたのだ。
必死に手当てをする女医と看護師たち。カミサマも怪しげな治療を試みるが医師には及ばない。
駐在を追いかけてきた少女に嬲り殺しにされる駐在。少女は助けてくれなかったカミサマも道連れにする。
カミサマとは前任の医師であった。何とか止めようとする女医、二人殺しの凄惨な修羅場がリアルに延々と続けられる。二人を射殺した妊婦の少女は自害する。
村人たちは、死んだカミサマの衣装を女医に手渡そうとする。逡巡の挙句、女医はこの神具を受け取り逆光の中、高く掲げる。
乙梨村に象徴される後進性の強い共同社会的ムラ社会へ取り込まれていくいわゆるインテリ人の一種の、これも悲劇であろうか? 何故? どうして? と疑いながらも引きずり込まれる女医の心の動きが必然性をもってリアルに感じられるのだ。細かな設定にリアリティがあるからであろう。
出演者、伊藤賜恵・男鎌田真吾・小竹万寿美・藤田真代・野々川彰人・柳瀬泰二・山谷義孝・明逸人