演 目
エキストラ
観劇日時/08.2.22.
劇団名/劇団 東京ヴォードビルショー
公演回数/第62回公演 旭川市民劇場2月例会 
作・演出/三谷幸喜 演出補/山田和也 美術/堀尾幸男 照明/宮野和夫 音響/井上正弘 音楽/荻野清子
衣装/菊田光次郎  演出助手/添田忠伸 舞台監督/岡嘉洋 写真/加藤孝 宣伝美術/鳥井和昌
劇場名/旭川市民文化会館

物語のリアリティ

 TV局の野外ロケ現場。廃墟になったような破れ寺の一画で、二つのプロダクションのエキストラたちが、江戸時代の農民の扮装で出番待ちをしている。
プロダクションのプロデューサーと監督との力の差でアシスタントディレクターは、てんてこ舞をしているが、エキストラたちにも色んな個性があって、その辺は面白く描かれている。だが残念ながらリアリティが感じられない。
一番不自然だったのは、インテリ・エキストラが人権侵害のプロデユーサーと対決するエピソードである。ここが最大の山場なのだが現実にはあり得ないだろうし、勧善懲悪の象徴としても底が浅い。おそらく一種の理想を象徴したかったんだろうが甘いな、というのが実感だ。
もう一つはほとんど寝たきりの老人がエキストラに交じっていることだ。これも現実感がなくエキストラの個性の象徴かとも考えられるが、単に突出した意外性だけが際立って一緒にエキストラをやっている妻との関係を物語る道具としか感じられない。最後に死体役で念願の夫婦競演が実現するというエピソードは妙に可笑しくそれでいて現実にはあり得ないのに微妙にリアリティを感じさせる。これこそが唯一この一遍中の面白い場面だが、その差がいったい何なのかは分らない。感覚としか言いようがないのだ。
必ずしも事実をその通りに描くことだけが、リアリズムではないことは明白だが、虚構がリアリティを感じさせないと観ていて違和感が大きい。
三谷幸喜は『笑いの大学』とか『ショウマストゴウオン』『その場凌ぎの男たち』などなどの僕が観ただけでも沢山の虚構でありながら充分にリアリティを感じさせる傑作があるのだが、今回は芝居上手の沢山の役者たちをそろえて2時間を楽しませながら、ちょっと滑った感じが強かったのであった。
出演は、佐藤B作・佐渡稔・市川勇・たかはし等・あめくみちこ・山本ふじこ・たかお鷹・綾田俊樹・
志賀圭二郎・石井洋祐、そのほか多数…