演 目
逃げろ/にっちもさっちも
観劇日時/08.2.17.
劇団名/yhs
公演回数/10年記念公演 第三弾+札幌福岡演劇交流プロジェクト
作/南参・川口大樹 演出/南参 演出助手/中村郁子 装置・舞台監督/上田知 照明/大橋榛名 
音響/橋本一生 小道具/青木玖璃子・井上亮介 衣装/水上佳奈・福地美乃・岩淵カヲリ 
制作/小森望美・十日市恵子・長岡登美子・吉竹歩・小原アルト・鈴木あゆみ・亀山統
劇場/シアターZOO

巧妙な構図

 舞台は12畳の和室に、チャブ台とTVと和室用の小テーブル。北海道の山奥にある断食道場のサロンと福岡の
私立男子校の教育実習生の休憩室のシーンが、それぞれ別の物語として、その部屋を舞台に交互に進められる。
北海道の五人の話は、それぞれの事情があって、それはアル中であり、夫の暴力からの逃避であり、負担金が
払えなくて住み込んだり、やくざのヒットマンが逃亡用に逃げ込んだり、優柔不断男が成り行きで入っていた
りする。そういうことがだんだんに分かってくる。
これが『逃げろ』であり、タイガー・アル中(=小林エレキ)の提案で厳重に外界と隔離されているこの道場を逃げる相談をするが、なかなか一致しない。
アッソ・優柔不断男(=丹治誉喬)は、残して来た娘への手紙ばかりが気がかりの女・ポスト(=福地美乃)への思慕が巧く展開し、ホラー・ヒットマン(=吉竹歩)の偶然の怪我による警戒の手薄もあってハッピーエンドとなる。それぞれのあり得ない状況を笑っている内に、あり得るかもしれない身勝手な弱さを曝け出した彼らを笑ってばかりもいられなくなる。
福岡の五人の話は、授業中に使っていた携帯電話を生徒から取り上げた、実習生の浜名(=小原アルト)と、その携帯を巡る田之上(=野村孝志)と淫乱な女教師・大室(=長岡登美子)、鍵を握る下北(=井上亮介)、街の風紀と安全を守ると自称するボランテイァの西田(=南参)という不思議な男。
3 VS 1+1の入り乱れこじれにこじれてスッタモンダの大混乱……どういう結果になるのか予断を許さない結末だ。これが『にっちもさっちも』の話。
この一見全く関係のない札幌と福岡の二つの物語が、TV中継のフアイターズとホークスの戦況に微妙にマッチングしながらシーンごとに交互に展開する。だからこの二つの物語が、全く関係ないようにみえて、対照的な話がその対照を際立たせるという効果が鮮明なのだ。
なおこれは札幌バージョンであり、福岡では福岡チームが同じ台本で上演する企画であるという。
このユニークな設定に眼を奪われるが、効果は絶大であった。野球はホークスの一方的な勝利で終わるが、これが福岡での上演では、きっとフアイターズの大勝利になっているのではないかと推測すると、その洒落たセンスに可笑しさがこみ上げる。