演 目
悲 別
観劇日時/08.2.11.
劇団名/富良野グループ
公演回数/ロングラン公演 2008冬
作・演出/倉本聰 演出補/平木久子 演出助手/城田美樹
舞台監督/九澤靖彦 照明/広瀬利勝 音響/三浦淳一
音楽監督/倉田信雄 制作/寺岡宜芳 その他 大勢
企画・制作/F・C・S・ 富良野GROUP
劇場名/富良野演劇工場
出演 森上千絵・久保隆徳・水津聡・山本智美・杉吉結・紺屋梓・大山茂樹・杉野圭志・平野勇樹
   その他大勢

プロパガンダの群集劇

 国家のエネルギー政策の無策による劇的転換によって、閉山された架空の悲別炭鉱。そこで生きていた人たちの悲惨な末路を描く。
力強い役者たちの圧倒的なエネルギー溢れる集団演技によって展開されるが、一種の宣伝劇だ。国家の無策無節操を強烈に批判し、それに頼らざるを得なかった人たちの末裔たちの悲劇に鋭い警告を発する。
だが残念ながら一人一人の深い内面を描ききれたとは言えない。表面的な典型の羅列しか感じられないから感銘も薄いのだ。登場人物たちの苦悩の実態が描き出されていたとは感じられないのだ。語り部の造形と演技は素晴らしいけれども、集団ヒステリィの論法で、理論的ではなく感覚的に糾弾する独白と煽動のように聞こえる……
しかし補助席まで出た満員の、必ずしも演劇に親しみの強いとは言えない一般の観客は、それには富良野観光を兼ねた旅行者たちもいて、要所要所で盛大な拍手を送り、カーテンコールではスタンデイング・オベーションで俳優たちを五回も呼び出した。
啓蒙的なテキストとしてはインパクトの強い舞台でありエネルギー溢れる役者陣ではあるが、見た目の美しさを強調した、いささか臭い型の演技でもある。
イントレを上手く組み立てて幕を張った物を上手く動かして坑道や炭住を表現したのが印象的であった。