演 目
夢の人
観劇日時/08.2.2.
劇団名/ケイダッシュステージ 深川公演
作/わかぎえふ 演出/マキノノゾミ
劇場/深川市文化交流ホール「み☆らい」

レトロな人情劇

 がっちりと造り込まれたいかにも商業演劇らしい、いかにも「お芝居を観る」という期待感の篭る舞台面だ。
時は暗黒の時代に向かう1945年、場所は大阪の「梅川」という女郎屋。なぜかそこにエリート・サラリーマン三越の社員・久我山(=升毅)が下宿している。
後で分るが、彼は家庭の事情と自分の身体のことでわざとそういう生活をしていたのだろう。だが決して自棄を起こしているわけではない。慎ましやかに誠実にひっそりと生きているのだ。
そこへ千代という若い女(=神田沙也加)が売られてくる。彼と彼女の密やかな純愛。
そして久我山の親友で海軍士官の牧岡(=渡辺いっけい)が久我山を頼ってくる。まさか女郎屋であるとは知らずに行きがかり上、そこに一緒に住むことになる。
「梅川」の主人も女将も住んでいる女郎たちも気のいい人たちだ。やがて此処で生れ育った女郎の明美(=安倍麻美)と牧岡との純愛が生れる。
暗い時代の窮屈さの中で、善意の人たちに囲まれた一種の理想郷だ。その意味では傑作『上海バンスキング』に似ている。状況は全く違うが時代背景と登場人物たちの雰囲気がよく似ているわけだ。
結核を病む明美は、従軍した牧岡に書類上の妻として、ウエッデエイング・ドレス姿の写真を写す、その姿のままで息絶える。
戦後、「梅川」を買った久我山の妻として、千代は逞しく花屋を経営している。身体の弱かった久我山は遺児を残して若死にした。牧岡が帰ってくる。一同が集まる。大事な二人が欠けたが時代は新しい世界に向かって明るさを感じさせる。
その他の出演者。
にわつとむ・三上真史・四條久美子・木村美月・林英世・小椋あずさ・酒井高陽・宮吉康夫・野田晋市。