演 目
伯爵令嬢小鷹狩掬子の七つの大罪 『千年の記憶』シリーズ
観劇日時/08.1.26.
劇団名/実験演劇集団「風蝕異人街」
公演回数/10周年記念公演第5弾
作/寺山修司 構成・演出・照明・装置/こしばきこう
舞台監督・選曲/石山貴章 音響オペレーター/セトハナ
宣伝美術/MIKI 制作/実験演劇集団「風蝕異人街」
出演/つぐみ=宇野早織 小鷹狩掬子=水戸康徳 赤ずきん=平野たかし アナベラ夫人=亀石しのぶ
   鰐夫人=石山貴章 アリス・令嬢1=田村マイコ テレス・令嬢2=れい子 
もう一人のつぐみ・迷子=俄のぞみ 額縁のジェニー=仁田原美沙 麻耶子=矢本結
娼婦マヤ1=下山隆之 娼婦マヤ2=井口工真 観客席の女=ボジョ・マルコヴィッチ
劇場/アトリエ阿呆船(雑居ビル地下の小室)

虚飾の真実

 寺山戯曲らしい舞台であった。貴族の令嬢や夫人たち、そしてそこに仕えるメードたちの物語。といっても物語らしい物語はない、というか良く分らない。
貴族たちとメイドたちの立場が逆転したり、また戻ったりする。そしてそれは令嬢・掬子のシナリオだったりする。要するに良く分らない状況ではあるが独特の表現が続き、それがいかにも寺山の世界とはこんなものなのかということを感じさせる。
虚飾の人たちと現実に生きる人たちとの対比を描写したもので、ラストは全員が素に戻って登場、真っ暗の中で一人ずつマッチを擦ると虚と実との俤が浮かび上がるという洒落たシーンだ。
この虚飾に満ちた人たちは、大袈裟でキンキラキンの過剰衣装であり、それに見合う舞台装置である。
ただ舞台面が間口6b奥行き4bくらいの狭いスペースなので逆にチープに見えるのが残念だ。
一点豪華主義とか、抽象化とか、装置にも何か工夫が必要なのではないだろうか?
以前に床がいかにも雑居ビルの汚れたままなのが気になると書いたことがあったが、今回は濃紺のカーペットを敷いたので少し良い雰囲気ではあった。
粘りっ濃いような独特の動きと台詞……その雰囲気がいかにも寺山の文体とその不可思議な内容によくマッチしていると思わせる表現である。
こういう表現の舞台に魅力を持つ若い人たちがいるということに意外な、しかし頼もしさを感じたのであった。