演 目
喜劇 告白の通夜
報告者 小森ネコ(在東京 グラフイック・デザイナー)
観劇日時/07.11.25
劇団名/劇団ズーズーC
作・演出・出演/オメオリケイジ
劇場/秋葉原 ズーズーC劇場

熱演で表現された人間の切なさ

 まず『笑息筋』第226号所載の原健太郎氏の文章から梗概を紹介しよう。
「両親を失った少年が時代劇俳優に引き取られ、やがて育ての父と同じ道を歩む。20数年後その父が急死する。父と共演していた息子は、父が突然に倒れたショックで記憶を喪失、父の死の原因も分からず周囲の人たちの話も作り話としか思えない。もしかして父と息子は本身の刀で殺陣を演じて切り殺したのではないかと思う。一種の謎解きで展開され、次第に込み上げる猜疑心や恐怖心さえもたった一人で舞台に佇むオメオリケイジが、その動きと表情と台詞で伝える。見事な描き分けだ。クライマックスは、問題の殺陣シーンの再現場面である。登場人物の七人を演じるのはオメオリケイジだけである。だがその殺陣が実にスピーディで、ひたひたと迫る死の恐怖を感じさせるに充分だった(要約)」
熱演でした。初め小さな声でぽつぽつ語っているのですが、周りにいる6人と次々に会話をして絡んでゆくほどに、声のメリハリとジェスチュアーの細かい応酬で6人が見えてくる。
実際の相手役がいるよりも、観客の想像力の方が人間関係の表現には効いているようだ。相手の台詞を最小限に繰り返し、返事だけリアクションだけで場内が爆笑、始まって早い段階で一人だけいた4歳くらいの男の子と私の隣に座っていた若い男が真っ先に笑ったんですが、ちょっと今時のテレビの芸人のように同じことを繰り返して怒鳴ったりする場面だったので一瞬レベルを疑ったんですが、それは力技という感じで、すぐに舞台の世界に引き込まれました。
残念だったのは、ちょっと長くて二時間弱ですが、やや中だるみがある。あとラストが纏め過ぎか? 殺陣のシーンからそのままカタルシスで終わるのかと思ったので、きれいに纏めようとするのが、やや違和感がありました。
でも照明が落ちると大拍手、ほんとに熱演で面白かったです。結構、無理やりの設定のわりには、人間の切なさが感じられて、とても良い本でした。
同行者(在東京 イラストレーター)は、「熱演で大変良かった」けれども、「若い時にこういうものを観て影響され、芝居の世界に足を突っ込んだりしていたら大変なことになっていた、(笑い)そういう魅力が大きい。」
「一人芝居は役者一人だけしか観られないから、好き嫌いが分散できないので、良い時と裏目に出る時があるんじゃないでしょうか」と言っていました。