演 目
嘘吐 ― ウソツキ ―
観劇日時/07.12.8
劇団名/劇団 亜魂(ASIAN HEARTS)
公演回数/通算第4回公演
作・演出/忠海勇 演出助手/萩田美春 照明/長流3平
音響/三島祐樹 舞台/濱道俊介 
制作/忠海勇・萩田美春・長谷川碧・柳瀬泰二・山本清美
劇場/レッドベリースタジオ

思索の演劇

 「嘘吐」という、かなり軽薄なタイトルから想像されるより遙かな径庭をもって哲学的あるいは文学的な内容の演劇であった。
人は自分自身の存在を信じられずに嘘をつく。あるいはもっと単純に自分を守るために?をつく。それが自分自身を、あるいは人間関係を壊していきあるいは偽りの構築を重ねる。そういう主題が描かれる。
真実があるから嘘があり、ある特定の記憶が抽出・肥大化されて、記憶喪失の逆転現象が起きるという逆記憶などという概念まで創り出し、かなり無理な設定だが、観ている時点では妙に説得力がある。
挫折した流行作家(=細川泰史)と新人の編集者(=金子綾香)は、本音で意見交換するうちに意気投合し、愛するまでに至る。だがそれは本物か? 
旧い価値観による編集長(=げやひろし)は、自分のやりたいことを通すために独立する。それは本意か? 
何となく編集者になった男(=泉清高)はそれなりに仕事をしているが、若い女性のエッセイスト(=長谷川碧)と組んで売り出す。同年輩の新人編集者とエッセイストは意気投合する。
流行作家の才能に賭けた女流作家(=伊藤しょうこ)は自分を捨てて、その作家に全力傾倒・献身する。一種の三角関係はどれが真実なのか?
こう書いてくると、割と平凡なストーリィなのだが、観ているときは深遠な感じがした。何かに誤魔化されたのであろうか。しかしこういう描き方は好きな部類だ。
作家の応接室と編集部のオフイスが、舞台装置の一部を変換することによって交互に現れ、洒落た手法で演じられるのだが、ほとんど映画のように1シーンごとに次々に変換されるので目まぐるしく煩わしい。


 12月の極私的ベストスリー 

☆ ループテープ
劇団 yhs
☆ 帰れないものたち
ff男盛りレコーズ
☆ フアイト!
劇団 千年王國