演 目
映 画/羅生門
(1950年大映)
原作/芥川龍之介 脚本・監督/黒澤明 脚本/橋本忍
製作/箕浦甚吾 撮影/宮川一夫 照明/岡本健一
録音/大谷巌 音楽/早坂文雄 美術/松山崇

人間不信の虚無劇からの曙光

 武士(=森雅之)と、その妻(=京マチ子)、偶然会った多襄丸(=三船敏郎)の三人のやりとり。妻は多襄丸に犯され、武士は殺害される。
三人の当事者の現実に対する認識の違い、それは自分に都合の良い供述なのか、無意識の認識違いなのか。
それを見ていた杣売り(=志村喬)の陳述も客観的真実なのか、誰も分らない。
四人それぞれの主観的真実は、虚無的でさえある。命のやり取りの中での当事者たちの告白は自己弁護であるかも知れないが、利害関係のない杣売りの申し出も信頼できないのか?
人間不信のニヒリズムの果てに、捨て子を養おうとする杣売りとそこに人間存在を肯定的に見ようとする旅の法師(=千秋実)が居て、ずっと暗い大雨の羅生門の雨宿りでの述懐は、そのとき雨が上がって空が少し晴れてくる。
その他の出演者、上田吉二郎・本間文子・加東大介。