演 目
君ニツタエタイコト
観劇日時/07.11.4
劇団名/ミュージカル☆工夢店
公演回数/第5・1回公演
脚本/菊地清大・寿福愛佳・高橋俊樹 演出/キクチキヨヒロ 美術/藤村健一
音楽/中村悠貴・大須賀ひでき・山村亜由子・川本友紀・宮田哲自 
舞台監督/宮田哲自・遠藤早妃 
衣装/新田佳代・千葉妙香・中村真由香 
ピアノ/篠原桃子 振付/松本詩緒里 振付助手/佐藤允洋
劇場/深川市文化交流ホール「み・らい」

成長した集団の力

 高度成長期に入る寸前の日本、北海道深川市内の農村部。義母(=加地麻美)と共に2人の子供(=千葉妙香・橋本光李)を育てながら農業を営む未亡人・井上幸(=寿福愛佳)がいた。夫は戦死したのだが、遺骨も帰っていない。一通の戦死公報だけだ。再婚話も持ち上がっている。当時はよくあった話である。
そのころ付近に不審者がうろついているという噂があった。近隣の農家の主人・武志(=佐藤自真)と仲の良い郵便局の男・政治郎(=佐藤允洋)は同級生で、偶然その不審者は未亡人の戦死したはずの夫・浩司(=菊地清大)だったことを知る。彼もこの二人の同級生で三人は仲が良かったのだ。
浩司は井上家には帰られないという。戦場で地獄を見、喪心のまま帰国して、広島の病院で原爆の地獄を見て精神状態がおかしくなり帰郷出来なくなったが、最近やっと家族の顔が見たくなった。しかし10年以上も音信不通にしてはいまさら合わす顔がないというのだった。
この集団は前回の『うるち88』もそうだが、普遍性があり現実感のあるテーマを再演・再々演と練りこんでいる。その点を評価したい。
一番興味をもてたのは、演技にリアリティがあったことだが、難をいえば、今回は肝心の歌と踊りがややおざなりの感があったのと、「ツタエタイコト」の内容が必ずしも充分に伝わらなかったのではないかと心残りであった。
前回の演目の上演のとき、舞台美術にポリシーが薄いのが欠点だと書いた。今回もその感じは変わらない。だが最近、面白い文章を読んだ。
「……現代アートを多く鑑賞している私にも、現代アートは、理解不能、意味不明、中には不快に感じる作品もある。……」(07年11月8日北海道新聞『魚眼図』倉本龍彦―道都大教授=建築意匠)。
もちろん全体の文意は現代アートに理解と援助をという主旨だが、この引用部分はそういう現代アートを肯定的にみている。この観点からすると、今日の舞台の美術も、一種の現代アートとしてみると面白いのかもしれないと考えるといささか複雑な思いである。
その他の出演。武志の妻(=中村真由香)、その子供(=深津尚未・大山口佳織・宮田あさひ・竹ケ原亜美)、
三人の友人(=田中良江)、天使たち(=宮田千晶・挽地美咲・山崎聖耀)、村長(=桜庭忠雄)。