演 目
ロミオとジュリエット
観劇日時/07.10.24
楠美津香 ロンリィ・シェイクスピァ・ドラマ
超訳・構成・演出・出演/楠美津香
劇場/深川シャイライサイ工房

新たな視点

 楠美津香が5年前にシェイクスピァ38全作品の上演、それも講談のように一人で演じるという悲願をたてて、そのシリーズを最初に観たときは一種のカルチャーショックを受けた。
原作をまったく崩さず、だが分りやすいように様々な現代化を施しシェイクスピァを大衆娯楽演劇と捉え、大勢の登場人物を独特のスタイルで描き分ける手法が見事だったからだ。
しかし二回目を観たときは少しがっかりした。手法がまったく同じなのは個性であるし否定はしないが、飽きるのだ。
そして余計な品格を取っ払ったのは良いが、古典的作品をみる視点に新しさが見えなかったからだ。
今度4回目を観たのは自分の意思ではない。ひょんな関わりだった……そして見事な視点を感じた。
それは突然解説者になった楠が、ロミオの短慮による悲劇を「バカな奴」と切り捨てる視点。「死ぬなよ、バカな奴」と愛着こめる視点が新鮮に感じられたからだ。
楠美津香がこういう試みを続ける以上、当然出てこなければならない視点であり、そこに大きな存在価値があるといえよう。