演 目
『満月』平成親馬鹿物語
観劇日時/07.10.20
夫婦印プロデュース
作・演出/水谷龍二 照明/五十嵐正夫 音響/原島正治
舞台美術/松野潤 舞台監督/武川喜俊 
宣伝美術/立川明 宣伝写真/渡辺広勝 
プロデューサー/万代博実・石井久美子 
制作/馬場順子・小野口友美
劇場/サンピアザ劇場
(新札幌ターミナルビル内の映画館を劇場に転用した札幌副都心開発公社と北海道演劇財団が共催する小劇場)

ささやかな哀歓

 舞台は居酒屋の二階の女主人(=竹内都子)の居間。都会の片隅の庶民のささやかな和室。一人の中年男(=菅原大吉)が居心地悪そうに待っている。彼の年頃の一人娘が、この女主人の一人息子に誘惑されたのを怒って談判に来たわけだ。
やがて女主人が現れて交渉に入るが、人扱いの巧い女主人には硬いサラリーマンの男では相手にならない。
硬軟自在に対応する女主人に、だんだん理解を示しながらも時々立ち直ってのクレームは空回りする。
その一部始終を克明に描写する。人情の機微を巧く説得する女主人にはこの男もやがてシンパシイさえ持つようになる。
この女主人も強いことをいっているが、寂しいのかもしれない。その経過の手練手管を、客席の笑いを誘発しながら描いてゆく。その二人の哀歓が客席の共鳴を包んで進んで行き、ほのかな温かみを感じさせた2時間であった。
超リアルに造られた和風二階建ての、その二階部分で演じられるのだが、その映画のセットのような現実感の強い舞台装置がレトロで懐かしく、そこで演じられる男女二人のやり取りは暖っかい笑いに包まれていた……