演 目
冬のバイエル
観劇日時/07.10.14〜15
劇団名/劇団TPS
韓国光州市「光州平和演劇祭」上演
作・演出・音楽/斎藤歩 照明/熊倉英記 音響/百瀬俊介
舞台/岡本朋謙 写真/高橋克己 字幕・通訳/木村典子
制作/横山勝俊 プロデューサー/平田修二
出演/父=永利靖 娘=内田紀子  兄=斎藤歩 妹=林千賀子 夫=高田則央 妻=宮田圭子
劇場/光州文化芸術小劇場

異国で静かに受け入れられた

 劇団TPSの作品の中では『亀、もしくは……。』と並んで最も好きで良い芝居であると思っている『冬のバイエル』が、韓国光州市の「光州平和演劇祭」に招待上演された。
父と娘、兄と妹そして若い夫と妻の三組の男女が、それぞれの事情をもちながら、少しずつずれながらも懸命に生きていく様子を一台のピアノを媒介にして、軽い可笑し味で覆いながら描いてゆく、人生の哀歓を深い愛情をもって描写したチエホフを感じさせる芝居だが、一種の静かな演劇と思われているこの舞台が、エネルギッシュで情熱的なこの国で、どのように観られるのかという興味もあった。
しかし意外と反応が良い。字幕の翻訳がきっと良いのであろう。ただ台詞より先に字幕を読んでしまうと、一瞬先に笑いが起こったりするのは仕方がないが、ともかく客席はよく笑う。
僕は二回とも例によって最前列で、初日は下手で二日目は上手で観たのだが、この劇場は舞台中央に半円の張り出し舞台が出ていて、客席もその半円張り出し舞台を囲むように扇形に両脇が広がっていて、この芝居にはちょっと使いづらい観づらいような感じだった。ただしすり鉢状に傾斜の大きい客席は後部の座席でも観やすいであろう。
舞台はまったく隙がなく充分に満足させられた。この劇場はキャパ約514席、オーケストラボックスの覆いがきちんとしてなくて歩くとギシギシ雑音がするのだが、そんな悪条件も気にならないほど観客の核心にも染渡ったと思われた。