演 目
スロウダンス
観劇日時/07.9.29
劇団名/劇団32口径
サンピアザ企画公演
脚本・演出/MARU 照明/河野哲男 舞台美術/今野一生 音響/湯浅俊幸 
メイク/片山昌美・丸山郁美 写真/原田直樹 制作/丸山佳織・板坂茉由・乙武明日実
劇場/サンピアザ企画

小世界の悲劇

 『32口径』という劇団名から連想されるのは「過激さ」である。極限の場面における最終の実力行使の象徴としての、弱い者の味方と信じる「銃器」を劇団名にしているからには、こちらもその最終兵器としての暴力的な過激さを期待してしまう。
ところがこの舞台はまったく違った。「早老症」という難病にかかった少女が20歳で80歳の肉体になり、老衰で早逝するという矛盾した約10年間の小世界の悲劇だが、周りの人たちの善意と、悪意ではないが反発と誤解との中で、限りある生を一生懸命に生きていく姿を描写する。
それは確かに感動的ではあるが、命の終末を知った幼い生命に対する同情心の安売りとも思え、やや白ける。
この主題は、過去にも何度か小説や映画やTVにも、そして舞台にも表現された。一種の純愛物語として……もう充分に分かってるから今更もういいよという感じだ。
だが、一般の観客は泣きながら観ている。たぶんそれが普通なんだろうなと思うと、自分の感覚のあまりにも客観的な冷静さに慄然とさえする。
演劇の感動っていったい何なのだろうか、という根本的な疑問さえ湧き起こるのだ。そういえばこの主人公の少女は、なにかあるといつも手をあげて「質問です」と言って自分の知りたいことを積極的に聞く。これは発病前からの彼女の習性なのだが……
おそらく、この「質問があります」というこの少女の言葉と行動が、今日の芝居の唯一の収穫であったのか。この常に前向きな生きる姿勢が大方の観客の共鳴を呼ぶのであろうが、僕はステレオタイプの小世界の悲劇は、観たくないよという感覚であった。
出演は、上田あや・大森俊治・三富香菜・屋木志都子・高井ヒロシ・井口浩幸・加藤ゆみ・中村裕二・
金澤晃一・福村灯夏・阿部佑哉