演 目
カノン カノン
観劇日時/07.9.15
平成19年度 札幌芸術劇場
脚本・演出/深津篤史 演出助手/原のり 演出助手/清水友陽 舞台美術/池田ともゆき 
舞台製作/フクダ舞台 照明効果/高橋正和 音響効果/大西博樹 衣装/岡本嚇子 衣装補佐/茂住梓
ヘアメイク/渡部勝哉・佐久間ひとみ・花山なぎさ 舞台監督/渡部淳一 イラスト/山田賢一
プロデューサー/嶋智子 制作/札幌市教育文化会館
劇場/札幌教育文化会館小ホール

チエーホフ的な喜劇

 航空機事故で破壊された古い大きな鰊御殿の廃墟。祖母の100日忌に集まった親族たち。親族といっても親兄弟ではなく叔父さんや従兄弟たちでそれも19年ぶりの集まりだから、特に配偶者たちにとっては初めて会うような人たちだ。 
この親族が親兄弟ではなく、もう一つ離れた関係である設定にしたところが、着かず離れずの微妙な雰囲気の人間関係を巧く表現している
彼ら彼女達の遠慮と探り合い、そして叔父従兄弟たちの過去の繋がり。それは男女の関係であったり利害関係もあったのだろうか?
10年ぶりの孫(=菅野良一)は、小説家になっていて、9年前に失踪した高校教師の父親は女性関係があったらしく、母親の100日忌である今日は現れず自費出版した小説が残されていた。
そうした回想の役を、現実を演じている役者が演じるので、どこまでが回想でどこからが現実に戻ったのか、現実の誰が回想の誰なのか、あるいは現実の彼あるいは彼女は、過去の彼あるいは彼女なのか、漠然と曖昧模糊なのが幻想的で何が真実なのか、何が妄想なのか判らない雰囲気が面白い。
しかも全編に、父の小説に登場する雌雄二頭の犬(=立川佳吾・南あいこ)が着かず離れずその雰囲気を助長する。
そして、犬は犬でありながら時として父の意思を持ち、他の人物たちの心情を朗詠したりする。
人々は、他人を忖度しながらも基本的には受け入れ、小波を立てながらも二日酔いの翌朝、浜ならではの、夕べも食べた獲り立てのサンマでの朝食……ストップモーションで幕。
チエーホフを彷彿とさせる2時間であったが、全体のテンポがゆったりとし過ぎであり、シリアス過ぎて諧謔味が全くないのが観ていて疲れた。
その他の出演者
叔父(=武田晋)、従兄弟(=岩尾亮・高田豊)、謎の女(=斉藤麻衣子)、小説家の妻(=渡辺香奈子)、叔父の妻(=松岡春奈)、従兄弟のガールフレンド(=中塚有里)。