演 目
Night Talk
観劇日時/07.9.7
マリ☆ナイト
公演回数/005
Theater・ラグ・203 特別企画
構成・演出/福村慎里子 出演/杉吉貢・福村慎里子 照明/6日=柳川友希・7日=平井伸之
音響/吉田志保 音楽/今井大蛇丸 宣伝美術/小島達子 協力/高橋正和
企画・制作/Theater・ラグ・203  マリ☆ナイト
劇場/ラグリグラ劇場

淡白な抒情

 古風な椅子に喪服風なスーツの女性(=福村慎里子)が、携帯電話のメールをボソボソと読んでいる。やがてはっきりと分るのはおそらく古今集の和歌だ。
何首かの和歌を淡々と読み上げる。しかもそれらの歌は失恋の女の歌ばかりのようだ。椅子に上に立ち上がった女はカッターナイフを取り出し、失意のリストカットのようにストッキングを切り裂く。
すると男(=杉吉貢)が現れ、露出した女の脚の肌にブルーブラックの絵の具で抽象模様を描いてゆく。それはまるで命を終えて再生へ向かう血が通る静脈の様でもある。
いつものこのコンビだと、ここから男女のあり得べき形が表現されるのだが、今回の女は完全に受け身一方だ。男も女の内面には積極的に関わってはいかない。
女は動きも静かだし小さい。男は冷静に構図を見ながら女が自ら徐々に全身を露にしてゆくのに合わせて太腿から肩そして背中・胸と身体いっぱいにその模様を侵食させていくのだ。それはまるで耳なし法一の全裸にかかれた経文の様でもある。
BGMはひたすら悲恋・哀切の和歌を繰り返す。途中から舞台両脇奥二か所から聞こえる福村の録音になり、重なったり人工的に変声されたり雑音が混じったりして聞きにくくなるので、正確には分らないが、気がついて数えてみたら27首が読み上げられていた。
だからこの和歌の内容に導かれて、女の内心だけが強く印象づけられる。合わせて男のボデイペンテイングも客観的な位置に見えてゆく。
図柄が完成して男が去り、一人残った女は一転して激しい動きになっていく。
サブタイトルは「テガミ」「night talk」「……」であるが、今回もこのサブタイトルの「…」の意味と前半との繋がりが分らない。もっとも福村は必ずしもそれには拘ってはいないらしいのだが……
終演後、福村はこのコンビによる「マリ☆ナイト」は終えると言っていた。おそらく前回で燃え尽きた感があったのだろうか?