演 目
トリスタン・イズー物語
観劇日時/07.9.2
シアターキャンプin北海道
編/ベディエ 翻訳/佐藤輝夫 演出/斎藤歩 音楽/朝比奈尚行 照明/青木美由紀 音響/百瀬俊介
舞台監督/尾崎要 宣伝美術/若林瑞紗 宣伝写真/田邊馨 衣装協力/田端乃里子
出演/小嶋尚樹・安藤啓佑・山田慎也・杉野響子・斎藤歩・岡本朋謙・裕木壱啓・高子未来・鈴木光介・
鎌内聡・石本春香・林千賀子・稲葉良子・川崎勇人・稲垣佳澄・原子千穂子・木村洋次・内田紀子・深澤愛・永利靖・佐藤健一
川村美奈・福島妃香里・宮田圭子・重堂元樹・串山麻衣・山口清美・
塚本淳也・黒丸祐子・渡辺直美
劇場/札幌芸術の森 野外ステージ

伝説を要約した、壮大な野外劇

 シエイクスピァの『ロミオとジュリエット』の元になったとも言われているこの中世ヨーロッパの伝承文学は、究極の純愛物語だが、メタファーが多いからそれをいちいち翻訳して考えなければ辻褄の合わないことが多いから疲れる。
一番の問題は発端になる「愛の秘薬」である。禁断の男女が口にするべきでなかったこの「愛の秘薬」を侍女の管理不十分でうっかりと飲んでしまったところから悲劇が始まるわけだが、この「秘薬」の意味が肝心であろう。ここをクリアーしなければ物語を前へ進めることが出来ない。
男と女が愛し合うことの基本が理屈では割り切れない、つまりすべてを超えた一目惚れが愛の本質であると言っているようだ。権威も義理も超越したところにこそ愛の本質があるということは逆に、そういう権威や義理によって阻まれた愛に苦悩する人々にとって、永遠の憧れであり、所詮適わない果てしない希望のロマンであったのであろうか?
それを象徴するのがこの「愛の秘薬」だったのか? 現代人はそういう素朴で健康な精神をもう一度振り返ってみようよ、ということか?
次に分りにくいのは「犬」の存在だ。イヌは主人の人間にとっては忠実の代名詞だが、敵対者にとっては「あいつのイヌだ」といわれるくらい厄介な両面性を持っている。
ここに登場するユダンというイヌはどうだろうか? ユダンという名前とは関係はないけど、おそらく油断のならない存在として物語を複雑にさせて欲しかったが……
実は岩波文庫の原作をあらかじめ読んで見たのだが、非常に複雑で、イヤ構造自体は単純なのだが、延々と引っ張られるので正直飽きてしまったのだった。
しかし登場者全員が楽器を使って演奏しながら演じ、あの広い野外劇場の芝生の観客席を舞台に使い、逆に屋根のある舞台を観客席にしたのが効を奏し、遠くに連なる森まで取り入れて壮大な叙事詩が展開されて爽快であった。