演 目
コバルトにいさん
観劇日時/07.9.2
劇団名/劇団 イナダ組
公演回数/ロードツアー 2007
作・演出/イナダ 照明/高橋正和 舞台/フクダ舞台 音響/奥山奈々 衣装/稲村みゆき・服部悦子
舞台部/中村ひさえ・本吉純平・坂本由希子 宣伝美術/小島達子 
ビデオ撮影/宮内写真館 舞台写真撮影/高橋克己 
制作/小柳由美子・根井聡子・井土雪江・岡田まゆみ・新浜円・茂住梓
企画・制作/劇団 イナダ組
劇場/札幌市教育文化会館

低辺を生きる男の切ない夢

 作者は底辺に暮らす人たちに視線を送る作品が多いような気がする。今回も公園の一隅のダンボールハウスに住む中年男(=納谷真大)の物語だ。
日常の生活からドロップアウトした人たちにはどこか現実離れのした人の良さが感じられるが、このコバルトと呼ばれる中年男もダメ男だが、自由さを求めるのと同時に優しさが現実から離れざるを得なかった原因であった感じがする。
ずうずうしい若者・寺田(=江田由紀浩)、彼もネットカフェに住む男だから一種のホームレスだが、彼には生活力がありそうだ。でも結局中途半端の強がりでしかないのが哀れである。何かとコバルトの小屋に刺さり込む。
ある日、寺田は最近ドロップアウトしたらしい「おい」と呼ばれる男(=野村大)を連れ込む。人がいいというか、万事無頓着なコバルトは同宿を受け入れる。
だがコバルトはアサコと名付けたダッチワイフと一種の同棲生活を送っているのだ。だから奇妙な三人暮らしとなる。
コバルトを兄だと称して入り込む女(=山村素絵)は、ほんとにコバルトを兄だと思っているのだろうか?
失踪した売春婦を探す刑事(=川井J竜輔)はその売春婦に殺人の容疑をかけている。
アサコは実は、ヒモを殺害した売春婦であるらしい……コバルトもそのことを知っていて保護しようとしているのだが、それは意識だけで、実際はアサコ本人ではなく、アサコと名付けられたダッチワイフという人形なのだ。
現実逃避するコバルトという男の、それは妄想でしかなく、現実逃避そのものが夢想人生であることに見合った妄想なのだ。しかも現実のアサコは、コバルトの妄想的好意を非情にも突き放す。
夢想と妄想とで現実を拒否する、人間的人間・コバルトは何処へ行くのだろうか?