演 目
ザ・リバー―風前の灯火
観劇日時/07.811
劇団名/札幌市民劇場
公演回数/エンプロ・プロデュース公演 Vol.7
脚本/遠藤雷太 演出/阿部祐子 舞台監督/ツルオカ 制作/佐藤瑠奈 小道具/後藤貴子 
イカダ制作/高土井重吉 舞台装置/六三四・上田知 照明/高橋由衣 音響操作/山本沙也加
宣伝美術/戸田ちかこ
劇場/BLOCH

生きるべきか、死ぬべきか

 三途の川を渡る筏の上、船頭(=小松悟)と二人の亡者。男(=小林エレキ)は高校の国語教師で円満な妻との家庭をもっている。女(=長麻美)は売れないタレント。男は不慮の事故で死んだし、女は心ならずの挫折で自殺した。
 現世に強い未練を残す男と、ふてくされて早く死の世界へと行きたい女……
 船頭を交えて狭い筏の上での10日間。肉体は滅びても現世の精神は残る二人の男女。魂だけの世界だから現実にはありえないこと、たとえば一切食事というものがなくても平気な設定ができる。
 さまざまなギャグとスピードある展開で、三途の川くだりの10日間が軽快に描かれる。落語の『地獄八景亡者の戯』の枠組みが借りられている。
その中で露になるのは、勤勉で誠実な男の挫折した本音の心境、女優としての退路を絶たされた女の暗い情念……そして最下級の肉体労働者としての三途の川の渡しの船頭の嘆きと苦悩と諦め……
 ラスト。このイカダは彼岸と此岸のどちらにでも上陸出来る中洲にあった。舞台は、始め此岸に戻りたかった男が三人での10日の経過の中で彼岸へ行きたくなったのと、初め彼岸へと早く行きたがった女が此岸へ戻りたくなる。つまり二人の思いが逆転したのに、さらにラストで男は此岸へ戻る予感で終わっている。
 だがこのラストは、この男も女も此岸へ戻るのか? 彼岸へと行くのか? その選択は果たして? というクェッションで終わって欲しかった。