演 目
いとこ同士
観劇日時/07.8.4
平成19年度公共ホール演劇製作ネットワーク事業
作・演出/坂手洋二 美術/堀尾幸男 照明/小笠原純 音響/市来邦比古 衣装/前田文子 
ヘアメイク/田中エミ 舞台監督/大垣敏朗 演出助手/城田美樹 美術助手/田中玲子 
照明操作/佐々木真喜子・木下尚己 音響操作/大久保友紀 制作/笛木園子・佐藤マキ子 
制作助手/松野創・寺島早苗・小林優
劇場/池袋・東京芸術劇場小ホール1

幻想か?妄想か?

 古いレトロな夜汽車の1両がそのまま舞台に再現されている。装置としては面白いが、客席によっては見にくいところもあるだろう。サングラスをかけた一人の老婦人(=渡辺美佐子)が物思いにふけっている。他には誰もいない。
一人の中年を過ぎたレインコートにこれもサングラスの男(=佐野史郎)がやってくる。いったん行き過ぎてからふと戻って婦人に同席を求める。ミステリィのような発端である。彼が来たのは偶然か? 意図的なものか?
婦人はミステリィ作家であり、男は反体制の秘密組織と、対立する国家機関とを渡り歩く逃亡者であり、二人はいとこである。それは両者とも了解事項だった。婦人は札束を男に渡す。ますますミステリィ仕立てである。
場面が変わって、若い男(=向井孝成)とそれよりすこし年上の女(=宮本裕子)が、やはり夜汽車の席で落ち合い、女は男に札束を渡す。老婦人と中年男の若い日の再現だ。男は老婦人作家の作品のなかの主人公でもあり、それは男をモデルにしたのか、男がその小説を読んで自分がその男である、といっているだけなのかはわからない。
二人が年齢の差と、いとこであるという障害を乗り越えて深い愛で結ばれている、これもまた観方によっては一つの純愛物語でもある。
ラストは、終着駅って何だろう? と問う老婦人作家に対して、男は「戻りのスタート地点でもある」と言う。これも一つのテーマであるのかも……
鉄道オタクでもある老婦人作家は、山奥に廃車になった鉄道車両を買って別荘として使っている。それがインテリアの一部を変えて次の場面となる。
そこへ尋ねてくるのは老婦人作家の息子(=向井孝成)とそのいとこである女(=宮本裕子)であった。彼等は小説の中の架空の人物であると思っていたいとこの男が、この変な別荘に実際に居たことに驚く。
なぜ夜汽車が舞台なのか? なぜいとこの愛なのか? キャッチコピーの「恋と冒険は、似ている」―おそらくそれらがこの芝居の鍵であろうか?