演 目
遭難、
観劇日時/07.8.3
劇団/e-blood
作/本谷有希子 演出/川本克彦 装置/大田創 照明/高木正人 照明協力/北島千尋・馬場義男
音響協力/山崎哲也 舞台監督/高橋まい子 舞台作製/佐藤純 大道具/藤原堅一 
小道具/高津映画装飾・寺川府公子 照明操作/澤山佳小里 音響操作/永田和久 衣装/吉田しおり 
宣伝美術/浜野基彦 演出助手/宮崎亜友美 制作/佐渡貴之・五味真由子
協力/竹若拓磨・田中英樹・竹内潤子・加藤拓二・松村泰一朗・高瀬裕美
劇場/東京・恵比寿・エコービル5階稽古場

エゴイズムの果ての女の喜劇

 ある中学校の職員室。2年生のある生徒が、自殺を図って意識不明となって入院した混乱を避けるために、2年生担当の4人の教師が古い校舎の一隅を仕切って、別室の職員室を作って体のいい隔離をされている。
自殺未遂の生徒の母親・仁科(=小野寺亜希子)が日参して、いわゆるモンスターピアレンツとしてやりたい放題だ。教師たちも腫れ物に触るようになすすべもない。生徒の訴えを無視したとされる女教師・江国(=吉田しおり)はひたすら平身低頭して、仁科にされるままであり、別の教師・里美(=沖田愛)は彼女をひたすら庇う。もう一人の女の教師・石原(=山中真理子)は他人事のような対応。学年主任の男教師・不破(=松沢太陽・ダブルで粟野志門)はひたすらおろおろするばかり。
やりとりのうちに、やがて里美の隠蔽工作だったことがわかるが、基本的に全員が弱みを持っていたり、里美の謀略で弱みを持たされる。
この辺の描写はリアルでシリアスながら人間の弱みを衝いて滑稽であり哀しい。仁科も巻き込まれて、この滑稽で哀しい5人の丁々発止の仕掛け合いが延々と演じられる。
ラストは、当の生徒が意識覚醒したという報に、それぞれの思惑を秘めながら病院に向かうが、自分の不利を悟った里美は全面敗北を感じて一人無人の職員室に残る。
窓から差し込む折からの夕日に泣き崩れ、かと思うと大きなあくびをしてソフアに沈み込む退廃の里美……
心の中に吹き荒れる風の音が次第に大きくなって、極限に達すると同時にカットアウト……あざといともいえるすれすれの、しかし強烈な印象が残る幕切れであった。
このテアトル・エコーは8階建ての堂々たるビルであり、2階部分が劇場、1階は半分がピロティで残りの半分と地下が製作場、3・4・6・7・8階はそれぞれプロダクションなどの関連会社の事務所であり、5階が大きな稽古場となっていて、ここを巧く利用して50席ほどの小劇場となっている。
間口が狭いから、上手(カミテ=向かって右側)のドアが唯一の出入り口だが、それを職員室の出入り口として使うことで違和感がない舞台装置となっていた。