演 目
プカプカ漂流記
観劇日時/07.7.30
劇団/ハートランド
公演回数/第11回公演
作・演出/中島淳彦 音響/井出比呂之 音響操作/坂本柚季 照明/今野恵美子
舞台監督/松下清永+鴇屋 舞監助手/青木規雄 舞台美術/田中敏恵 演出助手/山西真帆・杉本佳奈子
ビデオ・写真撮影/齋藤耕路 イラスト/久原大河 宣伝美術/小林哲也 制作補/杉上紀子
企画制作/ハートランド
劇場/下北沢 ザ・スズナリ

開き直った漂流人生

 九州のある離島。船室をイメージした黴臭い廃業したスナックへ突然現れた6人の女性。白いブラウスに黒い長いスカートの若い5人と黒ずくめのやや年配の一人。
10年以上も前に、中年のオッサンの教主を中心に大勢の若い女性を集めて「イエスの箱舟」という宗教集団を作り、ハーレムとして事件というか騒動を起こしたあの話題をモチーフとして書かれた戯曲の10年後の改訂再演である。
彼女たちは、それぞれに個人的な挫折を背負って、この集団は一種の駆け込み寺的な機能をもった組織であるらしい。だから彼女らは必ずしも聖書に誠実・忠実でもないようだ。オッチャンと呼ばれる教主もその辺は寛大だ。ともかく悩める女性の話を真摯に聞いてやるという接し方でカリスマ的人気絶大なのだ。
だが未成年の女性が入って来て、その親が告訴をしたためにマスコミの好餌となり、耐えられなくなった彼女ら5人は、オッチャンの妻である年配の女性を統率者として、この地に住む理解者である旧知のシスター・保育園の園長の紹介でたどり着いたところだったのだ。
彼女たちは不安を紛らわす為に、状況に応じていろんなコーラスを盛んに合唱する。それは童謡か唱歌の類いの懐かしい清潔な歌声だ。
現地の漁師の肝っ玉かあちゃんと、挫折を繰り返す若い女が出入りして何かと6人の邪魔をする。それは旺盛な好奇心とわずかな同情心なのだが、一同も迷惑でありながら未知の土地へ突然入り込んだ弱みがあるから遠慮せざるを得ない。
6人それぞれの精神的利害関係、土地の3人を通した現地の人達との葛藤、手持ち資金の渇亡と事態はどんどん悪化していく。
そんな時、いったん家へ戻っていた少女がまた家出して来た。避難した彼女らの状況を連絡したメンバーがいたのだ。その少女も両親との不和が原因だったが、その取り扱いを巡って紛糾する一同。
また少女の家族の告訴を受けて苦慮するオッチャン……それでもオッチャンに帰依する女たち……少女が妊娠を告白する、しかも相手は当のオッチャンらしい。絶体絶命………
土地の二人は強い同情心から局面突破の打開策として、彼女たちの歌唱力に着眼し、歌謡酒場を開くことを提案する。それを巡ってまたもや紛糾。
そのとき少女の妊娠は想像妊娠であったことが医師の診察で判明。同時に心臓に持病のあったオッチャンは病死したことがわかる。明暗悲喜こもごも……
そこへオッチャンの遺言と遺品が届く。遺言は『歌を忘れたカナリア』の歌詞と、遺品は化粧道具一式であった。
彼女らは、この廃業した元スナックに地元の三人の協力を得て、というか三人に強力に後押しされて、新しく歌謡酒場を開店する。
カーテンコールで、実際の「イエスの箱舟」の残党は今も現地でスナックを開いています。お出かけの節はぜひお立ち寄り下さり様子を知らせてくだされば幸いですと笑いを誘っていた……これも哀しい切ない喜劇である。
出演者。高橋亜矢子・馬場奈津美・渡辺由紀子・箱木宏美・梶原茉莉・保谷果菜子・福島まり子・椎名桜
    江原里実・宇都美由樹
役名と出演者の名前が一致しないので、出演者名だけ紹介します。



今月の推薦舞台

☆ 少女とガソリン …… 阿佐ヶ谷スパイダーズ
☆ 腐食 …… シアター・ラグ・203
☆ 眠れ、巴里 …… 東京乾電池

う〜ん、一つだけ選ぶのは難しい。