演 目
銀河鐵道ノ夜
観劇日時/07.7.25
劇団/TPS
公演回数/第23回公演
原作/宮澤賢治 演出/北川徹 照明/赤山悟 音響/五ノ井浩 美術/高田久男 舞台監督/清水洋和
衣装/黒丸祐子 小道具/中川有子 宣伝美術/若林瑞沙 製作/横山勝俊 演出助手/永利靖 
舞台監督助手/佐藤健一 舞台スタッフ/深澤愛 ディレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二
映像製作/梶田忍 衣装協力/HANY WEDDING
劇場/サンピアザ劇場(JR新札幌駅直結商業ビル内)

チェロの生演奏が賢治の世界を

 宮澤賢治の作品は、書かれていることは平易なのに内容は難解であり広く深く、その哲学は簡単には表現できないというイメージがある。
だからどうしても視覚化された表現には隔靴掻痒の不満感を感じる。もっと違うもっと深いはずだというような……だが、それが何なのかは分らないもどかしさが常に付きまとう。
ではどうするか、どこか一つを拡大して具体化するしか方法はないのではないか? という絶望感さえ覚えるのだ。
この『銀河鐵道ノ夜』にも、それが感じられる。この作品の何に共鳴し、何を再生産したかったのか? その視点が曖昧であり広く浅く文字を立体化しただけのように思われる。
具体的な不満は、戯画化が浮き上がって楽しめないことだ。賢治はユーモアの要素が強いが、単なる戯画化ではその真のユーモアは感じられない。
説教調の台詞がおぞましい。文字で書かれている分にはそれほどでもないが生身の俳優がその通りに語ると抵抗がある。
舞台装置に初演のときのような宇宙空間の広がりと星祭の華やかな期待感がない。
ジョバンニの台詞が弱々しくインパクトが薄く男だか女だか中途半端である。
と、不満ばかり並べたが、唯一感動したのはチェロ(=土田英順)の生演奏だ。これが賢治の世界を感じさせた。理屈ではない感覚だ。もっと話の流れに沿った演奏を聴きたかったのであった。