演 目
映 画/あなたを忘れない
観劇日時/07.7.23
「あなたを忘れない」製作プロジェクト
原作/辛潤賛『息子よ!日韓に架ける命のかけ橋』
   康熙奉『あなたを忘れない』
   佐桑徹『李秀賢さん あなたの勇気を忘れない』
脚本/花堂純次・i・iミムラ 監督/花堂純次 脚本協力/ジョン・ホドッジェ(韓国)
音楽プロデューサー/瘻コ雅祥 主題歌/槇原敬之
エクゼクテイヴプロデューサー/吉田尚剛・藤井健・山中美津絵・成澤章
劇場/深川市文化交流センター「み・らい」

不条理劇としての純愛悲恋物語

 2001年1月、東京・JR新大久保駅。韓国からの若い留学生が、線路上に転落した乗客を助けようと飛び降りて、もう一人の日本人と一緒に亡くなった事件の映画化である。
最初この話、こういう勇気があって献身的な人がいるということには強い感銘を受けるけれども、それを美談化して見せられるのもなんだかなーと思って敬遠していた。
しかし実際に観て少し考え方が変った。物語はおそらく架空のストーリィだと思われる純愛物語だ。日韓に蟠る考えの違い、彼女の父親との確執、ミュージシャンとしての生き方の悩み。彼の家族愛と将来の選択など、その中で育つ純愛……話としてはいわば通俗的だ。
家族や民族間の軋轢や生き方の問題も、徐々に溶け出して行く過程で、彼が唐突に死地へ赴くのはカタストロフィとして究極の不条理であり、「シンジラレナ〜イ」だ。
しかし現実には、この「シンジラレナ〜イ」は頻出する。この「シンジラレナ〜イ」の不条理は珍しくないのである。
そこでどうするのか? という問い掛けがこの映画の意味なのか? と思った。不条理は他人事ではないのだ。
釜山の美しい風景と、大阪の在日韓国人街の生き生きした情景が印象的であった。