演 目
少女とガソリン
観劇日時/07.7.12
劇団名/阿佐ヶ谷スパーダース PRESENTS
札幌えんかん7月観劇会
作・演出/長塚圭史 美術/.加藤ちか 照明/佐藤啓 音響/加藤温 衣装/伊賀大介 
ヘアメイク/河村陽子 音楽/伊藤ヨタロウ 振付/八反田リコ 映像/上田大樹
演出助手/山田美紀 舞台監督/福澤諭志+至福団
宣伝美術/Coa Graphics 編集/森山裕之 Web/新藤健 広報/吉田由紀子 票券/西川悦代 
稽古場進行/辻未央 制作/伊藤達哉 製作/ゴーチ・ブラザーズ
劇場/道新ホール

パラダイス崩壊の悲劇

 ささやかな理想郷を夢見る男たちの内部崩壊による自滅の物語である。それも過激であったり、リアリティを遥かに超えたリアリズムの表現法をもって……
例えば、内部抗争の末に腕を切断されても、とりあえず固く結束して平気だったり、密造の怪しげな酒を飲んで引っ繰り返ったり、アイドルの歌手を誘拐しても警察沙汰にならなかったり、常識的には説明できないシーンが頻出する。
 だがそれらはなんとなく納得させられてしまう力技が感じられてあまり違和感はない。それがリアリティを超えたリアリズムという表現であろうか……
 話の内容は、疎外されたある過疎地に残った住民たちの自分たちの土地に託する極端に強い愛着の度合いの話で、「暴走する男たち」というシリーズの一作になっている。
 この自分たちが暮らす土地のその象徴ともいうべきは、櫛田酒造の「真実」という銘柄の怪しげな日本酒だけども、酒蔵がやっていけなくなって福祉施設に売却され、明後日がそのオープン式典の日だ。
「真実」の再興を願って「丸玉」というこれも怪しげな居酒屋を営む玉島耕蔵・もと櫛田酒造の責任者(=中村まこと)、そこへ集まる、元杜氏の山路(=池田鉄洋)、その弟子・谷田部(=伊達暁)、元総務課員・笠城芳樹(=長塚圭史)たち。
 その式典のイヴェントに、こともあろうに彼らの精神的支柱であったアイドルの「リポリン」(=下宮里穂子)が出演するという許されない事態が起こった。リポリンを誘拐してでもイベントに出さないようにしなければならない。でもどうするのか?
 関係の無いホモの旅行者(=中山祐一朗・大林勝)や、この酒を飲んで破滅した男(=松村武)も巻き込んで事態は風雲急を告げる……
 アイドルのマネジャー(=犬山イヌコ)とこの集団のリーダー玉島がもと夫婦であり、笠島とは姉弟であったというのはちょっとご都合主義ではあるが、この過激な崩壊自滅物語りは緊張感あふれる舞台であった。
 しかしいつも思うのだけれども、こんな明るい展望の持てない物語を観たいと思う満員の観客の心情とは、どんなものなんだろうか? 僕は人の関係性の崩壊に興味を持ったが、特にこの舞台ではとりわけ一般的に人気のある俳優さんが出演しているわけでもないのに、それが不思議である。
 もう一人のマネジャー(=富岡晃一郎)が物語の幅を広げる。