演 目
宝塚BOYS
観劇日時/07.7.12
STV札幌テレビ放送
原案/辻則彦「男たちの宝塚」(神戸新聞総合出版センター刊)
脚本/中島淳彦
演出/鈴木裕美
照明/中川隆一
美術/二村周作
音楽/沢田完
音響/井上正弘
衣装/三大寺志保美
ヘアメイク/宮内宏明
振付/前田清美
歌唱指導/山口正義
演出助手/坂本聖子
舞台監督/大内敦史]
制作/栗間左千乃 
制作助手/中谷文
プロデューサー/市村朝一
協力/宝塚歌劇団
企画・製作/東宝芸能
劇場/北海道厚生年金会館

歴史を貫く庶民の生き方

 1945年、宝塚歌劇団に「男子部」が特設され、それから9年後に解散したという史実に基づいて書かれた原作の舞台化である。
45年といえば第二次世界戦争が終わった年で、日本中が大混乱の最中である。そういうときに東宝は、娯楽を求める庶民の求めに応じて「国民劇」を作るために、宝塚歌劇団に男子部を創設したのであった。応募したのは5期に亘って25名、そのうち8人の方がご健在であるそうだ。
舞台は2期7人の構成に縮小しているが、ほとんど史実を描いているそうである。他の登場人物は会社側の管理職(=山路和弘)と宿舎の賄婦(=初風諄)。
集まった7人は、純粋に歌劇に憧れた特攻隊の生き残り(=柳家花緑)、やくざと称しながら実はしがない日本舞踊のお師匠さんの息子、歌劇団のバックバンドだったが舞台に立ちたかった男、ダンスで身を立てる踏み台にしたかった男、女の園に興味のあった男、などなどそれぞれ一筋縄ではいかない連中が多い。この人物たちは配役が分からないので役者名だけを紹介する。葛山信吾・吉野圭吾・三宅弘城・佐藤重幸・須賀貴匡・猪野学。
二年間の研修期間が過ぎてもなかなか実際に舞台に立てるどころか男子部の存在さえも危くなっていく。それは宝塚歌劇というものが女子だけで成り立っているという奇形的な純粋性を求めるフアンの要望や、それを守ろうとし出した経営者側の変節があったからだ。
そういう中では逆に、大劇場の舞台に立ちたいという7人の純粋な意識が固い団結と友情を育てる。経営側の再三に亘る希望的観測に何度も望みを抱いては裏切られる7人。間に入って苦悩する管理職。暖かく励ます賄の小母さん……
これは戦時中、政治や軍の上層部に脅されたり励まされたりしながら遂に損滅した庶民たちの状況に重なる。そしてさらに経営の都合で振り回され結局、挙句の果てに放り出される現在の人たちの現実にも重なる。つまりこの7人の苦しみと希望と挫折は、過去から現在を貫く、人々の歴史の象徴としての9年間であるわけだ。遂に解散が決まった日、彼らは彼らの夢の象徴として、電飾きらめく大階段の大舞台で溌剌ときらびやかにタキシードで踊る華やかなシーン……だがそれはダンスというよりは体操みたいな感じだったが、所詮は儚い夢のシーンでしかない。変って派手な衣装で背中に大きな羽を付けてのダンスシーンでは客席にホーっというため息があがったが、実際にはほとんど7人が並んで、吹奏楽のドリルのように並んで軽く動きながら歩くだけ、いささか拍子抜けがした。管理職はかつて歌劇の演出家になるのが夢で、会社側と板ばさみになりながら7人と自分の夢のために努力したが遂に破綻したことを告白し、賄の小母さんはやはり歌劇団出身の夢破れた一人であったという予定調和。ラストは新しい生活に向かって旅立つ7人が、懐かしい稽古場に別れを告げるすがすがしい幕切れであった。