演　目 アラビアンナイト 観劇日時/07.7.2 劇団名/文学座公演　旭川市市民劇場 脚色/ドミニク・クック 訳/鴇澤麻由子　 演出/高瀬久男 音楽/芳垣安洋・高良久美子 美術/島次郎 照明/中山奈美 音響効果/斉藤美佐男 衣装/出川淳子 振付/新海絵理子 舞台監督/加瀬幸恵 演出補/��田俊哉 制作/白田聡 出演/三木敏彦・石川武・外村史郎・助川嘉隆・木津誠之・亀田佳明・西岡野人・目黒未奈 太刀川亞希・草野万葉・築野絵美・上田桃子・藤崎あかね・松角洋平 劇場/旭川市民文化会館

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寓話劇の面白さ 　アラビアンナイトの中から七つの物語をオムニバスとして並べ、それにプロローグとエピローグを付けた構成。 アラビアンナイトは、フアンタジー色が濃く児童文学の分野で教訓的な物語として知られているような印象が強いので、初めは、ちょっと食指が動かないかな？　という感じであった。 しかし観ての感想は面白かったというに尽きる。グリム童話が残酷だとよく言われる。日本のお伽噺も、かなり残酷なストーリィや表現が多い。 さてこの芝居、大枠としての「王様が妃に裏切られ、その後毎夜若い娘を一夜妻として翌朝死刑にし、それを繰り返す」という発端からして常識はずれの残酷さだ。 それを防ごうとして、シャハラザードという美女が自ら志願して毎夜、物語る話の中身も残酷でおどろおどろしい。 その一々の内容は紹介しないが、なぜ寓話というものが残酷なのかを考えてみる。 閉塞状況の下で喘ぐ人々の、一種のカタルシス（感情放出）的効果をもたらすカタストロフィ（悲劇の終幕）表現。 死とか惨死とかは、感情の極端な比喩表現として分かりやすいということがあるのかもしれない。実際にはあり得なくても、自分では実行出来なくても、物語にしてしまえば自分の気持ちは開放されるかもしれないという、暗い感情の代位表現。 これはたとえば、先日の『弥生三番街ゴールデンキラーズ』という芝居が、やくざや警察の世界を描いているのに似ている。この世界では殺人とか死とかにある程度のリアリティがあると想像され、生死という状況が人の極限の心理の表現として無理なく描くことができるという仕組みと近いような気がする。 この極限的残酷物語を、音楽劇として明るくコミックに表現したために、あまり悲惨な残酷性を感じさせない。むしろ滑稽な喜劇性＝世界の客観視という印象が強かった。 そしてラストで、人間の感情に目覚めた王のシャハラザードに対する愛情はご都合主義のようにも見えるが、この展開では必然的なハッピーエンドとして止むを得ない予定調和の終わり方であろう。