演 目
弥生三番街ゴールデンキラーズ
観劇日時/07.6.30
武田晋 叙情派演劇協会vol 1
作・演出/武田晋
照明/上村範康
舞台制作/渡部淳一
選曲・音響効果/ARASHI
音響/奥山奈々
ヘアメイク/link
衣装/稲村みゆき・服部悦子 
写真/柳沢隆博
宣伝美術/小島達子 
制作/小柳由美子・井土雪江・中村ひさえ・岡田まゆみ
プロデューサー/小島達子 
エクゼクティブプロデューサー/イナダ
制作協力/オフイスティンプル スプートニク
製作/武田晋叙情派演劇協会
劇場/コンカリーニョ

水戸黄門的・勧善懲悪劇

 武田晋が以前に主宰していた「ジーウイルス」という劇団を「ゴールデンキラーズ」と改名した途端に活動停止したことについて、当日パンフレットに本人が「現状の展開に歪みを感じたから」と書いている。
僕が観客として感じたのは、単純に物語がマンネリ化したからだと思っていた。それが今回、新しいユニットとして再出発したのを期待して観せて貰ったが、一言で言えば良い意味でのマンネリ、開き直って自信をもって自分の世界を継承したと言える。
17人という大勢の登場人物を5つのグループに分け、その外に3人の個人、そして話に出てくるだけの2人の重要人物という複雑な構成は、舞台を観ているだけではなかなか理解できない。
当日パンフの人物相関図と首っぴきで確認しながら観なければならないが、結局話は単純だ。
底辺にうごめく下層階級の人々、まず無店舗マッサージ店の女・マリリン(=山村素絵)、ナンシー(=渚)。そして没落した暴力団の遺児・精神を病む姉(=渡辺香奈子)、孤立した弟(=高田豊)、ぐれている連れ子の義妹(=宮田碧)。
神奈川県警の刑事たち(=剱谷哲哉・菊地英登・本間未紗)、捜査本部の刑事(=川井J竜輔・野村大)。
市立探偵事務所の4人(=佐藤慶太・高橋真人・山田マサル・松岡春奈)。遺児の姉の看護師(=大橋千絵)、エロビデオのカメラマン(=本吉純平)、そして配役表にも相関図にも載っていない警察庁の女性幹部の以上17人である……
この登場人物を眺めただけで何となく話が判る気がするが、つまり県警の刑事の一人が上司に嵌められて逃走中に、証人の捜索を市立探偵に依頼する。
最後に嵌めた上司の刑事が悪事を暴露されて逮捕される、という芯にさまざまな脇筋が絡んでゆく。いわゆる「涙あり笑いあり」の壮大な2時間であるが、予定調和なので僕は泣けないし笑えない。
ラストに悪い上司が逮捕されるとき、裁断を下すのは警視庁の上司であり、これはまるで水戸黄門の葵の紋章だ。ここでフラストレーションが一気に解消される痛快さは悪くない。
だが勘ぐれば、ここで一気に解決するために水戸黄門である警視庁の女性幹部を登場させる必要を感じて、パンフが出来た後で追加した人物のようにも見え、ご都合主義の匂いもする。
そして不幸の姉と弟は心中する。これは一種のカタストロフィーであるが、なぜ二人は死ななければならなかったのか些か意味不明なところもある。
だが波乱万丈の物語を、一騎当千の役者陣によって楽しませてくれたことは、正直に白状しよう。