演 目
悪徳の栄え
観劇日時/07.5.19
劇団名/実験演劇集団 風蝕異人街
公演回数/第27回公演
マルキ・ド・サド作品集より
構成・演出・照明・装置/こしばきこう
照明オペレーター・舞台監督/石山貴章
音響プラン/MIKI
音響オペレーター/瀬戸睦代
衣装・メイク/VIVI
宣伝美術/中野地香子
制作/実験演劇集団「風蝕異人街」
劇場/アトリエ阿呆船

逆説としての悪徳

 サン・タンジュ公爵夫人(=三木美智代)が、少女たちを集めて不道徳の実行を薦める。それはまるで邪教集団のようだ。淫乱・快楽、殺人、近親相姦、謀略、その他すべての不道徳を、いちいち尤もらしい根拠を挙げて説得する。
 一人の少女・ジュリエット(=宇野早織)は、反論し質問しながらも次第に感化されていく。
半裸の9人の少女(=婀狐・ニケ・俄のぞみ・チハ・雪姫・飯塚有香里・高橋理恵・みなせ・Lane)たちも、貴婦人に鞭打たれながらも肉体の快楽に溺れていく。
余談だが、この半裸の少女たちは確かに美少女たちだが栄養満点というかふくよかで悪くいえば太めが多いのが面白い感じだった。多分着痩せするんだろうな……
 やがてぐったりした貴婦人を、車椅子に載せて看護師になったジュリエットは、医師になったサド(=辻潤一)に対応を聞く。医師はセラピーの効果をもう一度やり直そうと申し渡す。
そうだったのだ、これはバーチャルリアリティ、幻想現実に陥った精神病患者たちの治療だったのだ。
 今度はジュリエットが貴婦人の役を演じて、次の少女に同じことを繰り返し出す。
 サドの作品そのものが、現実を描写するというよりも作者の心象風景を客観的に表現したとも言われているからこの設定も荒唐無稽ではないようだ。
 狭い舞台に大勢の出演者が登場するので、ほとんどが貴婦人とジュリエットの問答だけで構成され、それを8人の半裸の少女たちの群像との絡みで見せる。かなり無理な設定だが飽きさせない。
 セラピーで括ったのが意外であるが、悪徳を否定するような逆説としての説得力があって興味深かった。
ビルの地下の一室の狭いアトリエ・阿呆船に設えられた豪華な部屋の装置は、建築用のブロック資材とプラスチックで作られたらしい直径3センチほどのパイプで組み上げられ、紗布を使ってそれらしい雰囲気を感じさせるが、床がいかにも古ビルの汚れたチープさでブチ壊してしまったようだ。