演 目
桜襲
観劇日時/07.5.6
劇団名/劇団SKグループ
公演回数/第24回 東京・札幌公演
脚本・演出/すがの公
照明/相馬寛之 
音響/糸川亜貴
衣装/井嶋麻紀子 
舞台美術/妹尾知美
小道具/小玉乃理恵
刀製作/高橋隆太
宣伝美術/すがの公・小島達子
劇場/シアターZOO

悲劇と喜劇の重層

 時代に取り残された象徴としての、幕末「新選組」の物語だ。国粋主義の幕府を守ろうとする「新選組」と、新しい時代を開こうとする土佐藩。
 だがこの芝居には直接に土佐藩士は出てこない。怪しい隠密や架空の人物として登場する。それらの人たちと実在の新選組の志士たちや架空の女剣士らが活躍して物語を展開する。
 新選組の中での内部抗争のなかでナンバー2の土方歳三は己の存在を失って狂っていく。これは清水邦夫の『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』に重なる。
狂ったリーダーが正常な判断を誤っていくというのは、全共闘の破綻とも一致する人間が壊れる末期の悲惨な症状だ。その重い主題を、軽やかな笑劇の笑いに包んで表現した。
新選組の内部抗争にモチーフを求めて、虚々実々の物語を織り出したこの芝居は、人間の業つまり宿命の描写という「悲劇」と、人間と社会とを客観視した「喜劇」として一つの舞台に表現した重層的な、一筋縄ではいかない舞台になっていたのではないか……
 ただ悲壮感に溢れた女主人公のさくらの位置が、最後までわかりずらいのがちょっと気になったのだが。……土方の恋人らしいのだが、靴を愛用しているところを見ると文明開化の象徴らしい。もう一人の女も靴だが、これは土佐藩の間者だ。そこにも尊皇攘夷の立場に立つ土方の乱心の原因があるのかもしれない。坂本竜馬も靴を愛用したという逸話をきいたことがあったような気がする。
コメデイリリーフの三人(=楽珍トリオ)がシリアスな本筋に巧く馴染んでいたのが意外な収穫であった。
 行く先の判らない人達、だが行かなければならない人たちの辛さ、哀愁……そのシリアスな面とバカバカシさとが巧く解け合ってしんみりと爆笑した舞台であった。
 この戯曲はすがの公の旧作の改編再演だそうだが、最近の作品より分かりやすく深みがあって良いと思う。旧作再演の『Gダッシュ』にもそれが感じられ、今回もその感を強くしたのであった。
出演/小山めぐみ・高橋隆太・天野さおり・高橋逸人・立川佳吾・楽珍トリオ・古崎瑛美・能登英輔・江田由紀浩
彦素由幸・あかね・松下綾華