演 目
第2柿沼特攻隊
観劇日時/07.4.29
劇団名/劇団イナダ組
作・演出/イナダ
照明/高橋正和
舞台/フクダ舞台
音響/奥山奈々
舞台監督/渡部淳一
舞台部/中村ひさえ・浅野顕・本吉純平・坂本由希子
宣伝美術/小島達子
舞台写真撮影/高橋克己
宣伝写真撮影/星野麻美・奥山奈々
衣装/稲村みゆき・服部悦子・茂住梓 
宣伝広報/岩本圭・井土雪江
制作/小柳由美子・根井聡子・井土雪江・岡田真弓
出演/飯野智行・納谷真大・川井“J”竜輔・江田由紀浩・小島達子・山村素絵・佐藤慶太・野村大・宮田碧・高田豊
渡辺香奈子・高橋真人・黒岩孝康・武田晋
劇場/コンカリーニョ

過激な喜劇

 この芝居の面白さを、話の展開に従って書いても多分それはあまり意味がない。それはこの芝居の現場に立ち会った観客だけの持つ特権だからだ。観なかった方が悪いとしか言いようがない。
観客としての僕は、この芝居が意味するものの価値とは何か? そしてこの芝居の何が面白かったのかという二点を報告するのが責務なのだ。
まず、この芝居の意味するものを、簡単に言うと一種の不条理の世界だ。キャッチコピーが「働けど働けど我が暮らし楽にならざる……」という啄木の歌に詠まれた下層階級の人たちは、現在の感覚からみると殆んどアナクロの世界、でもそこに今の時代が陥っている経済的な矛盾が象徴的に表現されている。第3柿沼荘という下層階級の集団住宅に住む、心身ともどうしようもない傷を負った人たち……
彼らの日常は、滑稽にしかし批判的に描き出される。それが喜劇の所以なのだ。喜劇とは世界の客観視なのだ。
全ての日常の行き詰まりの果ての住人たちは、一旦ハッピーエンドを予想させた土壇場のラストで、住民一同は非現実的にも軽機関銃をもち、それぞれの敵に向かって一斉蜂起する幻影をもつ。このまったく意外な最終場面は、閉塞感を吹き飛ばすカタルシスの強い快感を与え、過激な劇的興奮を齎す。イナダ組としてはたぶん前代未聞の終結だ。
そして面白いという視点……。ともかくこの集団の表現は理屈抜きに面白い。様々なキャラクター、実在しないような人物=幽霊、劇中、一言も発せずほぼ出ずっぱりの少女など、巧みな造形で納得させて表現する、安心して舞台に集中させる優れた技術がある。
特筆すべきは16歳15歳14歳という高校生中学生の役を成人の俳優が演じて違和感がないことだ。