演 目
虹と雪のバラード
観劇日時/07.3.22
劇団名/TPS
公演回数/第22回公演
作・演出/斎藤歩
スタッフ/黒丸祐子・成田麻美・佐藤健一・深澤愛 永利靖
制作/横山勝俊・近藤大介
宣伝美術/若林瑞紗
ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二
劇場/シアターZOO

浪漫派的な政治劇

 物質的にと同時に、精神的にも発展途上の意気が高揚した時代、札幌では冬季オリンピックが開催され、そのテーマ曲『虹と雪のバラード』の一節「街ができる、美しい街が〜」という、作者の斎藤歩が「健全で爽やかな理想」を感じたという1972年……それから35年、果たして札幌はどうなっているんだろうか? という物語。
新ひだか町から昆布の束をリックに背負って、居なくなった妹を探すために札幌の街を彷徨う漁師の青年(=川崎勇人)、この新ひだか町という町名も実は居なくなった妹(=内田紀子)が勤めるラーメン屋の店主(=宮田圭子)が当日パンフで語っているように、変な政治の悪産物を象徴しているようだ。
街角では、ロシアの民芸人形マトリョーシカにロシア産の電子楽器テルミンが仕込まれたマトリョーミンという楽器を使う女占い師(=山口清美)が、しがないサラリーマン(=木村洋次)からぼったくっていたりする。その家出した母親・占い師を説得に来る息子(=永利靖)も同じくマトリヨーミンを演奏している。マトリョーミンは不思議な楽器だ。弦もキイもなく手をかざして動かすだけで哀愁を帯びた幻妖な音を出す。
彼らを過激派のテロリストと見て追っている、国家警察の刑事(=林千賀子)と部下の刑事(=岡本朋謙)。マンホールから現れる怪人・マタギ(=高田則央)。
この街角の女占い師とサラリーマン、それに絡む尋ね人を探す青年漁師のシーン、マンホールから現れる怪人のシーンなどは昔の状況劇場を想いださせる雰囲気が強く、ローマン調で僕の好きな場面だ。
実は、青年漁師以外はすべて中央集権の悪しき専制を糾弾する反権力の隠れた闘士たちで、妹も例外ではない。刑事と彼らの追いかけっこは、荒唐無稽のドタバタギャグの応酬で汗だくの熱演。
僕はこの手の作劇は好きな方だが、残念なのは、権力側の描き方が余りにも生で嘘くさいことだ。意図してマンガチックに誇張して描いたのかも知れないが、もっと怖さを感じさせる方法はなかっただろうか?
この世界の実情をよく分からずに、07年の現実に希望を失って素朴な故郷へ帰る青年漁師の後姿に、演じる川崎勇人の後姿が重なって好演を印象付けた。