演 目
不思議の国の大人のアリス
観劇日時/07.3.9
北海道舞台塾 先進的創造活動プロジェクト
脚本・演出/清水友陽
芸術監督/イナダ
振付/小泉しずか・佐々木絵美・高橋学・山田絵里子
照明/宮崎貴弘
舞台美術プラン/野村たけし
音響/森大吉
衣装/岡本嚇子 
音楽/ジョーダウン・五十嵐真理
映像/小川亮輔
制作/北海道舞台塾実行委員会事務局
プロデユーサー/嶋智子
出演/高石有紀・亀井健・小島達子・福村慎里子・黒岩孝康・古崎瑛美・久々湊恵美・上總真奈
イシハラノリアキ・小石川慶祐・喜井萌希・その他ダンサー23名
劇場/札幌市生涯学習センター ちえりぁ

アナロジーとメタフアーの物語

 「不思議な国のアリス」のキャラクターと状況設定を使って描き出した、ピーターパン症候群の31歳独身女の過去帰りの物語。
 15歳の中学生の時、勉強しないで空を飛ぶ訓練をしていれば、今もっと違う人生があったのではなかったか?と夢想する。
 兎が行く穴とは何か? その中に何かがあるのかも知れないし行き止まりかも知れない。そのアナロジー。
 頻発する尿意を我慢することのメタフアーは、何かをがまんすることと、すべてを流し去ることの象徴か?
しかも母である女王は恐れ多くも便器の玉座におわします。両親が専制君主であること、たくさんの扉の存在……。そしてすべては主人公のアリスが少女時代に描いたマンガの変形の再現として表現されている。
 こうみてくると、なかなか面白い話だ。だが実際の舞台は必ずしもそうは観られなかったのだ。何故だろう?
 まず考えられるのは、話が分かりきっている、つまり予定調和だからだろうか? 次にキャラクターがオリジナルに寄りかかり過ぎてはいないであろうか? 何かがすべてが童話臭すぎる感じに抵抗感が強いのではなかろうか?
芸術監督のイナダ氏が、当日パンフで「(要約)マイナーな演劇というものを身近な存在にするために何かを変えていかなければならない」と言っている。
確かにイナダ氏自身は、その路線を成功させつつあると思う。しかしこの舞台は、その思いを汲み上げたであろうか?
エンターテインメントは表現の一側面ではあるから、イナダ氏の考えを肯定はするけれども、僕個人は純粋系の特化された表現の存在をもっと大事にしたいという考え方を評価したい思いが大きいのだ。