演 目
39
観劇日時/07.2.24
劇団名/ワクチン
公演回数/第6回公演
原案/小笠原寛人
脚本/雨夜秀興 
演出・選曲/箕輪直人
照明/上村範康
音響/依村慎也
制作/イヅチ
宣伝美術/阿部まさこ
写真/奥山奈々
協力/劇団イナダ組
劇場/シアターZOO

意外な展開のエンターテインメント

 場末の流行らない居酒屋「39」。客の保育士・楠(=愛海夏子)が子ども達に絵本を読んでいる回想。その絵本は、町娘の悲恋・自殺という変な物語だ。子ども達が聞いてくれないので爆発し、我に返って酒を飲み始める。
やがて酔っ払いの部長(=ふるさとたかし)と腰巾着の課長(=マイケル小野)の常連がきて大騒ぎ……
シーンが変わって、命の綱の公衆電話がある崖の上、そこは悲恋の町娘・トミ(=棟方いづみ)が自殺をした名所だ。そこへ資産家の坊ちゃん・北上(=雨夜秀興)が自信喪失症で自殺を企ててやって来る。
そこへ町娘・トミの亡霊が現れ、自殺を思い止まるために命の綱・電話を掛けるように促す。掛かった先は居酒屋「39」だった。
間違い電話と思った店主(=箕輪直人)は受話器を外したままでの大騒ぎ。その4人の声を聞いた北上は、生きる力を取り戻す。トミは北上に失恋相手の風貌と性格を感じ、その末裔ではないかと密かな恋心を抱く。
居酒屋には地上げ屋の部長・鬼怒川(=音羽美雨)と課長・吉澤(=あいざわ)が大金を提示して通って来ている。だが店主は事故で死んだ妻の望みでもあった思い出のこの店を売りたくはない。協力する常連たち。
トミの存在があって、北上が生きる望みを持ったことで、逆にまたも恋を失ったトミは、命の綱の「39」を尋ねて来る。トミの亡霊は、死ぬ気を持っている店主・楠・部長の3人以外には見えないのだ。
3人は、北上が死ぬことによってトミの恋は成就するのだから、北上に偽の愛想尽かしをして自殺させてしまえばトミの恋は遂げられると焚きつける。
北上はどうしても死ぬ気になれない。電話で地上げ屋と居酒屋とのやり取りを聞いた北上は、その地上げ屋の元締めが自分の父親であることに気づき、父の声を真似て中止を指示する。職を失う鬼怒川と吉澤……
お礼に「39」を訪れる北上、楠の絵本の続きから、冴えないこの部長こそ、トミの恋人末裔であることを知って愕然とするトミ……
無理な設定もあるけれども、巧みな演技力と、予定調和にならなかったエンタメとして充分に楽しめた。だが、ここから何かを汲み取ろうとするのはおそらく難しい。