演 目
URUCHI88
観劇日時/07.2.18
劇団名/北の元気舞台 北海道舞台塾
公演回数/札幌招聘公演
作/菊地清大・寿福愛佳・高橋俊樹
演出/菊地清大
舞台美術/藤村健一
舞台監督/大坂ルツ美
振付/藤井綾子
音楽/中村悠貴・宮田哲自・山村亜由子・タイガーザグレート・川本友紀・大須賀ひでき
音響・照明/サウンド企画
その他大勢
劇場/かでる2・7ホール

締まった舞台

 03年に初演、昨年の再演を手直ししての札幌公演。地元の劇団だから、僕はその二度とも観ている。
明治初期の北海道深川市のあたり……当時、北海道ではお雇い外人技師の提言によって、気候と土壌の適さない北海道では稲作は不適当であるとして禁止されていた。屯田兵は麦か大豆を作るべきとされていた。
 そこで農作するために入植した屯田兵の中に稲作を試みる人達がいた。彼らの稲作指向の理由はそれぞれではあったが、お上のお達しに逆らって稲作を続けることは大変なことではあった。
 監視する屯田兵の中隊長、道庁で稲作推進派の窓際官吏、地元で稲作に共鳴して陰に陽に助力する人たち、だがそれに反対する家族や昔の同郷人……
 家族の問題や現代にも通用する軍事力の問題、それらの複雑で絡み合う問題を含んで舞台は展開し、これらのサイドストーリィが巧く絡んで、いささか予定調和ではあるが面白く見せてくれる。
 おそらくこの舞台は、初演から再演へと膨らみ変化し練られて成長している。元の話が単なる地元深川の先祖の成功談ではなく、障害を乗り越えて行く人達の苦しい闘いの物語りであったので現代の物語りになり、それが再演・再々演になり得た要因なのであろう。
 最大の欠点は、美術にある。衣装も問題だが、衣装にはそれなりの意識が感じられる。それに対して舞台装置があまりにも稚拙だ。リアルならリアルに、象徴的なら象徴的に、そのポリシーがまるで感じられない。バラバラでともかく作ったみたいな装置は、創るという意識が感じられなかった。
 今度の舞台は、演技に纏わっていた余分な垢のような夾雑物が削ぎ落とされて、すっきりと爽やかに締まった舞台になっていたのが印象的であった。
 それと不思議だったのは、前回では監視する中隊長より謎の旅行者(稲作推進派の役人)の方がインパクトが強かったのに、今回は逆転して中隊長の存在感が大きく感じられたことであって、これは対立を際立たせる戯曲の核心を表現しているようだ。