演 目
太陽系第三惑星異常なし
観劇日時/07.2.4
劇団名/TPS養成所
公演回数/TPS養成所卒業公演
作/斎藤歩
演出/宮田圭子 
照明/黒丸祐子
制作/横山勝俊
出演/猪木=長岡卓 お友達=藤岡あかり 金沢=堀内まゆみ 市川=青木健太郎
三浦=伊佐治友美子 森村=近藤大介 宮部=佐藤恵莉 吉川=篠原花菜子 野村=高子未来
劇場/シアターZOO

 02年5月にTPSが当時のスタジオで本公演として初演している。その時の感想は、「人類の滅亡に直面している地球防衛軍のメンバーが、日常の身辺のゴタゴタから離れられず、太平楽な顔をしてその日その日が過ぎていく。2年11ヶ月後の人類滅亡と言っても、個人レベルで考えれば、たとえば癌の宣告を受けたのと同じことになるのであろうか?」と醒めた感想を書いている。
これは人類滅亡などという現実感の薄い、イヤ最近地球温暖化などという現象が深刻になるにつれて、あながち現実感が薄いなどとは言ってられないのかも知れないが、まあ日常的には緊迫感は薄い。「そういう現実離れのした遠い未来に舞台を設えてみても、人間の小さな営みなど一向に変わらないということか」とも書いている。
さて物語。近未来の地球防衛軍基地の休憩所、真っ黒な幕で三方を囲われた狭い舞台に白木で作られた粗末な箱が3個。それがスツールのような役目をして、9人の人物が入れ替わり立ち代り登場して、彼らの身辺雑事、主に男女関係の話だけど、それらのほとんど全ての会話に、「一応」という枕詞が入るような、無責任で他人事のような会話である。
だから話の内容も、人の話を聞いていない、自分勝手に解釈して誤解して怒ったり反発したりして、話が一向に噛み合わない。
だから地球破滅・人類滅亡というショックングな予告も、身辺雑事なみの話題で処理されて平気なのだ。これはそういう究極の事件を人工的に作って、人間の愚かさを実験してみたのであろうか?
初演の感想のラストで、「惑星から連れ帰ったペットとしての宇宙人が不気味で、最後はその宇宙人の無限増殖を予感させる行動を恐怖で見守る一同となって幕」とも書いてあった。
このように現実に眼で見えるものに対しては、はっきりと喜怒哀楽が現れるのに、とりあえず見えないものに対しては先送りする心情が対比して描かれていたのだが、今回は印象に薄いあっさりとした幕切れであった。
現実離れのした抽象的とも感じられる演技は、少々学生たちには荷が重かったか訴求力は弱かったようだ。