演 目
カルメン
観劇日時/07.1.19
スロバキャ国立オペラ
劇場/沼田町民会館 (深川の近隣町の会館で1階は平土間、2階は200席ほどの普通の客席)

 オペラは本来、大衆の娯楽芸能である、と信じる小樽の篤志家・長谷川洋行氏が、現在の日本では一部の愛好家が特権的にオペラを権威主義の砦にしている、これを何とか本来の姿に取り戻さなければならない、という厚い熱情で、手弁当でその意気に投合したスロバキャの国立オペラ・カンパニーと提携して小編成の公演班を組み、全国を巡演している。
それもいわゆるグランドオペラを上演するような大劇場ではなく、主に田舎の公民館のような、施設のあまり良くない小さなホールで上演している。
だから舞台装置もなく、オーケストラもない。こういう公演形態に賛同してくれる力のあるピアニスト1人だけの伴奏で歌われるのだ。但し衣裳だけは出来るだけ本物を持ってくるというシステムらしい。
ここ沼田の町民会館も古い建造物で、1階は平土間にパイプ椅子、2階が辛うじて普通の客席らしい設えだが、照明設備がほとんど無い。こういう普通の常識では考えられない条件のホールというか講堂で演じられるわけである。
さて実際に楽しめたか? 応えはノウであった。通訳がストーリィを解説して、部分々々のナンバーを歌うわけだが、歌詞が全く判らないので入り込めない。僅かにストーリィを追うのが精一杯だ。歌を楽しむというよりは珍しいものを見たという感じだ。
確かに声量もありテクニックも素晴らしいとは思うが、おそらく馴れないということもあるんだろう、例えば若い人が浪曲を聞いたようなものであろうか?
それに較べると第2部の「オペレッタとミュージカルのナンバーから」というのが楽しめた。もちろん意味は判らないが歌手たちもリラックスして乗り乗りで歌い、観客も手拍子で唱和し、しかも一曲一曲が短いので飽きないし、次々に感触の替わった曲が歌われるので、今度はどんな曲かな? という興味も湧く。
難を言えば、照明の設備がないので、何処からか持ち込んだありあわせの器具で不器用に照らしたが、無残で逆効果であった。これならむしろ裸の素照明のほうがすっきりとしたのではないか。衣裳が思ったより粗末で、物語の夢が感じられない。
地元の熱気が充分に伝わったのが収穫であり、おそらく長谷川氏もその点には手応えを感じたのではないか。