演 目
ヌーヴォー・シルク『蝶のめまい』
観劇日時/07.1.12
ベルギー/フェリア・ミュジカ
演出/ファトゥー・トラオレ
劇場/札幌教育文化会館大ホール

高度な技術と飛び交う華麗な演技

 最近サーカスというものを観る機会が少なくなった、というか全くなくなったといった方がいいかもしれない。40歳代の同行者も初めて見たと言っていた。
「ヌーヴォー・シルク」というのは、そのサーカスとコンテンポラリイ・ダンスと演劇とジャズ音楽とのコラヴォレーションというものだ。
全編を彩る空中ブランコは、サーカスの基本演技でサーカスの花だが、普通テント小屋の壮大で高い空間で見るのと違って、普通の舞台で演じられるのは高さもないし広がりもないから壮大な華やかさがないが、そのかわり林立したポールを使った空中技と、トランポリンを使って舞台から空中のブランコに飛び移るという技を使ったり、目まぐるしく走り回るボールを使ったジャグジー技が交錯して、高度な技術が舞台一面を華やかに彩る。
そして音楽は、シンセサイザーとドラムスは固定されるが、ギター・サックス・アコーデイオンなどのミユージシャンが、舞台中を縦横に演奏して回る。その音楽は華麗というよりは何か一種の哀愁感が漂う。それは華やかであると同時に短い蝶の命の儚さを表現しているかのようだ。
コンテンポラリー・ダンスは切れのよいギャグがコミカルであり、傾度の強い斜面舞台を使って高い技術で演じられ次々に展開するシーンは様々な物語を想像させ、それがコンテンポラリー・ダンスの特徴である演劇性をよく表現していた。
例えばミイラのような全身を半透明の生地で覆われた人物がじっと立っているのは、まるで蛹のようでありそれを剥ぎ取って中の男性が現れると、別の男性がからかうようにじゃれるように絡むのは子猫のようであり、幼蝶と子猫の戯れのようであるが、何時の間にかその二人がホモセクシアルのような絡みを見せ始める。すると世界はエロチックに一変してしまうのだった。
二人で5個のボールを扱うジャグジーは、5個のボールが生きているように二人の間を飛び交う技術に目を奪われる。ところがカーテンコールで投げ上げたボールが背中の袋に入らず、もう一度やり直してもやっぱり外れて苦笑して、観客も大笑いしたのは本当に失敗したのか演出だったのか……多分ほんとうに失敗したのであろうか愛嬌あるシーンであった。実は本番中にもその演技一回失敗しているのだが、あまり気付かれなかったようだが……