演 目
サンタのうた
観劇日時/06.12.23
劇団名/skc☆二人芝居
公演回数/全国巡演 札幌公演
脚本・演出/すがの公
照明/及川奈緒美
音響/石嶋南絵
音響協力/糸川亜貴
宣伝美術/小島達子
ちらしデザイン/天野さおり
舞台美術/すがの公
制作隊長/井嶋麻紀子
企画制作/劇団 SKグループ
劇場/シアターZOO

懐かしく切ない父娘の物語

 とても素直に素朴に良くできた人情喜劇だ。物語らしい展開はないけど、一応話の背景を紹介しよう。
初夏の頃、別棟にあるらしい2階の物置部屋の片付けに来た40歳の父親(=すがの公)と20歳のその娘(=天野さおり)。この場所はこの二人にとって共通の思い出のある場所だ。毎年、この軒先に巣を作るツバメの思い出とともに……
父親は15歳の時あるマンガ賞に入賞して以来、マンガ家を目指すが、いつまでたっても売れず、40にもなって相変わらずコマ割りやベタ塗りのアシスタントをやっている。会社を経営するしっかり者の母は、そんな夫に愛想を尽かして離婚する。
大学生の娘は、自立を考えて学資を出している母に内緒で退学する。
そんな二人の、互いに相手を思いやりながらの内に込めた想いの数々を語り合う、というかそれはほとんどコントのように噛み合わない会話の断片だ。
互いの弱みをチラチラと見せたり隠したりの攻防が、微妙に可笑しいやりとりだ。
そしてそれは情けない父としっかりした娘の、懐かしいが永久に帰ってこない郷愁であり、微かな切ない温かさだ。
話に出てくる母親であり元妻である人も、彼女がいたから二人がいるという意味では、やはり二人にとっては大きな存在であろう。
この時間の永遠に続くことを意識の底で願っている父は、なんだかんだと言いながら何とか片付けを長引かそうと画策する作戦が実に可笑しい。
ツバメの雛が鳴いたと思ったら夜は寒くて毛布を掛けたりするのが初夏なのか初秋なのか判らないし、娘の面接の電話が来ると思えば停電になったりする設定が昼なのか夜なのかが判らず、どちらも微かな違和感があるのがちょっと気になった。
だがそんな微かな瑕疵も乗り越えて、父娘二人の存在に温かくなる2時間であった。