演 目
「はえ」と云う名の店
観劇日時/06.12.9
劇団名/劇団 FICTION
公演回数/シアターZOO提携公演
作・演出/山下澄人
照明・音響/ふらの演劇工房
舞台監督/バタヤン
宣伝美術/西山昭彦
プロデユーサー/白迫久美子
劇場/シアターZOO

現実離れのキャラクターの競演

 気の弱い男が生きるために、曰くのある地下室を安く借りてスナックを開く。この地下室にはいじめられて自殺した男の幽霊が出るのだ。この幽霊が青塗りで下半身裸のバカで滑稽で悲惨な幽霊だ。
 移動パン屋を失敗したドジな夫婦者は焼け焦げた犬の縫いぐるみでこのスナックに出没。独立に失敗してホームレスになり、この物件を紹介したことを恩に着せてたかりに来る調子の良い元不動産屋の男。なぜか黒人に憧れ、黒塗りにド派手なコスチュームで就職のために履歴書作りに余念のない若い男。
 ホールスタッフはちゃらちゃらした鼻ピアスの男で、彼は北朝鮮の出自らしく、突然、核保持国のアメリカが北の核を非難するのは理不尽だと怒る。日本が言うのならまだ分かるが、アメリカがいうのは筋違いで許せないと怒鳴る。
それは真面目に考えて意見を言っている感じではない。話の流れでつい怒鳴ってしまったというような切実な庶民感覚と滑稽なリアリテイとが強く感じられて、この話の流れの中では強烈な印象を与えた。
 ホームレスの男が連れて来る、座頭市みたいな盲人と、気の弱い男のエピソードが思ったよりも弾まないのがいささか残念。 
失意の夫婦が縫いぐるみの犬で登場する、そういえばこの劇団の前回の『ヌードゥルス』(05年8月観劇)にも縫いぐるみの猿が登場したが、この猿は障碍者を暗示する確固とした位置があったと思うが、この犬はどうだろう? 人間性を失った存在とでもいうのだろうか?
それに黒人に憧れて黒塗りの男とか、突出したキャラクターは、そこに込められた意図はあるにしても、お遊びが過ぎたおふざけのような一面が誤解され易く、評価し難いのが難点だ。
現実離れのした特異のキャラクターが面白いといえば可笑しいのだが、それに頼りすぎるのが笑いを表面的にしている感じがする。
まあこれは観る者の好みの問題なのかもしれないが、別の方法はないのかなとは思う……
配役表がなくて役名が判らず出演者のみ紹介する。
山下澄人・山田一雄・矢田政伸・大山健・福島恵
井上唯我・大西康雄・竹内裕介・市川しんぺー