演 目
イージー☆ライアー
観劇日時/06.1114
劇団名/イレブン☆ナイン
公演回数/第3回公演
作/納谷真大
演出/久保隆徳
音響/三浦淳一
照明/廣瀬利勝
演出助手/森上千絵 
舞台監督/杉野KC
舞台進行/東誠一郎 
制作/太田竜介・角田亜紀
宣伝美術/水津聡
劇場/深川市「み・らい」

苦さのあるエンターテインメント

 誰でも緊急の場合、とっさに嘘を吐くことがある。それがとりあえず事態の混乱を回避する有効な手段となる場合もあるからだ。
結婚式前日に、昔の男(=大山茂樹)が尋ねて来て男二人が鉢合わせし、とっさに今の男(=水津聡)を兄だと偽り、昔の男を弟だとその場凌ぎの嘘をつき逃げだす女(=松本りき)。
その場に残った男二人は、それぞれ互いに義理の兄であり弟であることを了解して、何の疑問も持たずに危ない橋をわたる。
男を選べない優柔不断というか、どちらの男にも未練たらたらな、この女の精神の象徴として、冒頭で結婚式場の支配人(=久保隆徳)を相手に、披露宴の料理選びが出来ない女の滑稽さが描かれる。
この自分の意思で物事を選べない女の悲劇が、終始一貫この芝居のテーマか? こんなどうしようもないバカ女に惚れた男に同情出来ないやと思ったけど、観ている内にリアリティを感じ出したから芝居は不思議だ。
これはこの役を演じる女にリアリティがなければタダのバカ女になって成り立たない芝居だ。観ている内に何故だか哀しくなる芝居だ。笑っている内に自分を省みて哀しくなる芝居だ。
ラストは、夫に裏切られた女の親友(=久保明子)と新しい男のために彼女を諦めた昔の男の、傷付いた者同士のブランコのシーンが幻想のようで美しかった。視覚的には確かに美しいが、長く垂れ下がったブランコの紐の描き出す幾何学模様が、如何にも人工的なのが観客に媚びているようで少し気になった。
これで無事にトップシーンに戻って、ハッピィエンドかなと思ったのに、最後に幸せを掴んだと思った女の元へ、ずっと昔の外人の男が尋ねて来るという振出へ戻ったような衝撃的な終わり方であった。ただしこの外人は登場しません、玄関に現れたという女の驚きのリアクションで幕というわけです。
一見その筋風の隣家の男(=六条寿倖)が、コメディリリーフとして要所要所に登場し、盛んに怖がらせ笑わせていた。