演 目
白 野
観劇日時/06.10.27
劇団名/緒形拳ひとり舞台
原作/エドモンド・ロスタン
訳/楠山正雄
翻案・脚色/額田六福
潤色/島田正吾
演出/鈴木勝秀
音楽/朝比奈尚行
美術/二村周作
照明/倉本泰史
音響/井上正弘
演出助手/阿部洋平
舞台監督/眞野純
企画・製作/Bunkamura
劇場/たきかわホール

第3パターンの一人芝居

 演劇の魅力の原点は、生身の人間同士の葛藤と、関係性の経過の現場に立ち会えることだと思っている。
その観点からみて、いわゆるひとり芝居を三つのパターンに分類する考え方を思考している。詳細については『風化135号』と、今号の『酔っ払いと椅子と宇宙人と』(P.10)にも書いているのでご参照ください。
この『白野』は珍しく第3のパターンである。この例としては寡聞ながら落語しか知らない。おそらく本格的な舞台では初めて観たと思う。僕としては一人芝居ではこの第3のパターンこそ演劇としての魅力が最大限に発揮できる一人芝居だと考えるので、今日の舞台は素直に楽しめたのであった。
物語は単純、純愛の美学を貫いた男の一生である。容貌にコンプレックスを持った無骨で単純で純情な男・白野弁十郎と、彼が恋する絶世の美女・千種、美男だがハートの薄い若侍・来栖生馬、老齢になっても若い日の純愛を貫く弁十郎。
言わずと知れたエドモンド・ロスタンの、『シラノ・ド・ベルジュラック』の物語を、新国劇の島田正吾が一人芝居に翻案し、その弟子の緒方拳が受け継いだものだ。
登場人物は、この他に、居酒屋の亭主、弁十郎の属する朱雀隊の隊士たち、僧侶などの脇役も演じる。
この表現力は大いに魅力的だが問題も多い。緒形拳は感情の起伏の表現が小さく訴求力が弱い。もっと喜怒哀楽のメリハリを強調する方が感情移入し易い。
緒形拳の台詞の語尾が締まらない。流れてしまうのがだらしなく聞こえて減点される。
簡素だが良く創られた美術・照明・音響などが一種の様式美を感じさせて美しい。
ウオルター・ロバーツ(Walter Roberts)が演奏するチェロの生演奏が心地よい。