演 目
レモンソーダと姉の声
観劇日時/06.10.19
劇団名/TPS
公演回数/第20回公演 シアターZOO企画
作・演出/北川徹
照明/黒丸祐子
音響/成田麻美
舞台/深澤愛
制作/横山勝俊・近藤大介
企画製作/北海道演劇財団
劇場/シアターZOO

先行きの見たくない人たち

 6年後の北海道のある町。地域の産業廃棄物処理業者と結託して、間の抜けた生活をしている、滅びかけた小さな商店街の若手経営者たち、といっても能天気で呑気な遊び人たち。集まる場所は酒屋の裏手にあるらしい倉庫のようなところ。
これは先日観た「男盛りレコーズ」の『マカレモノ』の設定に何となく似ているような気がするが、その後の展開はもちろんまったく何の関係もない。
そしてこの舞台装置の雰囲気は、「南河内万歳一座」の『青木さん家の奥さん』にそっくりだ。ビール・ケースや様々な食品らしい箱が乱雑に積まれたり置かれたりしているのが、この人たちの心象風景を象徴しているのだろうか。
いろんな芝居を観ていると、やはり被っているところが散見されて、それはそれでまた面白いのではあるのだが……
さて彼らは会議と称して、日ごと無駄な相談事をやっているが、それは遊びにしか過ぎない。滅びいく者たちの、哀しい線香花火か、焦慮感から逃れるための空騒ぎなのか……
一人、うす暗がりの中に座り、クラリネットで『宵待ち草』を訥々と吹く孤独な中年男・八幡薫(=永利靖)。それに合わせるように『蘇州夜曲』を口ずさむ老姉・仙台ツゲ(=宮田圭子)。この2曲は、随分と旧い曲だが僕の好きな曲で、滅びの哀愁美学のような……
つまりこの芝居は、滅びゆくものに対する愛着とレクイエムなのか? 当日パンフには「諸行無常の物語」と記されていた……ただこの舞台からはその真意は伝わり難く感じられる。今、書いているこの文章も、舞台からというよりは頭で考えて構築したような文章である。
ただ、このいわゆる遊びと称する行事の表現が面白くない。小学校の誕生会みたいで、といっても僕は最近の小学校の誕生会はまったく知らないから、僕のイメージの中の誕生会だが、それがとてもチープであり、洗練された遊びとは言えない。
もっともわざとチープにして騒いでいるとも考えられるのだが、いずれにしてもこの空騒ぎは僕の趣味ではなく、「諸行無常」の隔靴掻痒感も大きく、かなり落胆したのであった。