演 目
夜の水
マリ☆ナイト Contemporary Danse performance 003
観劇日時/06.10.6
構成・演出/福村慎里子(マリ改め)
出演/杉吉貢・福村慎里子・柳川友希
照明/鈴木亮介
音響/湯澤美寿々・村松幹男
音楽/今井大蛇丸
衣装/岡本嚇子
ちらしデザイン/小島達子
協力/高橋正和
企画・制作/Theater・ラグ・203 マリ☆ナイト
劇場/ラグリグラ劇場

静と動、死と生

 劈頭、真っ暗な舞台、無音の中、上手袖から一筋の光を受けて真っ赤な毛糸玉が転がり出る。その糸を踏むように女(=福村慎里子)が出る。舞台中央に来た女は、その糸と戯れるような手遊びのような踊りのような動きと、昔の女の子の手遊びである綾とり遊びのような動きをしばらく愉しむように踊る、というよりも遊ぶような感じは幼女のイメージか?
やがて、濃いグリーンの絵の具を持った男(=杉吉貢)が出て、女の腕に葉脈のような絵柄を描き込む。それは葉脈であると同時に人体模型の静脈の様でもある。
やがて女は、黒くて薄い衣装を徐々に脱いでいくと、それに従って裸体の背中から太腿・殿部と全身に、葉脈であり静脈でもある濃緑の模様が次々にゆっくりと描かれていく。
時々、背景の紗幕を通して赤い糸を林のように張る別の男(=柳川友希)が透かして見える。舞台上の赤い毛糸と、背景に時々見えるその赤い太い糸は、動脈の象徴なのだろうか?
全身にグリーン模様の描き込みが終わると男は突然、今度は真っ赤な絵の具を含ませた太筆で、女の肩先から斜めに脇腹に掛けてバッサリと切り込む。
それはまさにバッサリと一太刀を浴びせ、血を噴出させたような感じだ。だがそれは女の死であると同時に、女の心臓から肺にかけての大動脈を創生したというような、矛盾したというか、人間の死から生へと逆転する一瞬のイメージでもあった。
それまで、むしろ受動的で動きも小さく少なかった女が、その瞬間から大音響のロックのリズムに乗って生まれ変わったように全身全舞台を使って踊り狂う。それは生命の再生であり生の歓喜なのか?
今回の舞台は、前回の『マリ☆ナイト』と一見同じように見えながら、今度の舞台ではほとんど直接的なセックスのイメージは感じられない。
静と動、死と生の対比という感覚が、グリーンと赤の象徴で浮き上がったという印象であった。