演 目
マカレモノ
観劇日時/06.10.1
劇団名/ff 男盛りレコーズ
公演回数/第1回公演
作・演出/岩尾亮
照明/清水洋和 
舞台美術/渡部淳一
音楽/ARASHI
衣装/高石有紀
舞台監督/長谷武
音響操作/丹治誉喬
演出助手/石井希代子
宣伝美術/コジマタツコ
小道具製作/中川有子
人形製作/杉吉結  
制作/嶋智子・田口美智子・岩田知佳・佐井川淳子・丹治誉喬・乙川千夏・山本千絵・熊木リサ
劇場/コンカリーニョ (札幌琴似のNPOコンカリーニョが建設運営する生活支援型文化施設)

軽妙で重厚な社会派悲喜劇

 道南のある架空の街の、川に囲まれた中州の土地、原子力発電所がある桜地区に所在する金子リサイクル商会は、何やら怪しげな雰囲気だ。どうもまともに仕事をしているような気配が感じられない。
最初は極めて日常的なのだが、社長の金子(=赤坂嘉謙)は得体が知れない感じだし、突然異常な行動に出る。二人の従業員(=岩尾亮・谷川登)はこれまた異常に従順だ。
そこへ新しいコミュニティの成立条件について論文を書くと言うふれこみで、一人の若者・学生(=岩田雄二)が訪れて、彼がここを訪れて3日目から、この芝居が始まることになる。
従業員の一人(=谷川登)は、子供のころ親に虐待されて金子に拾われたという境遇だ。学生はその経緯についても何かを調べているらしい。このあたりサスペンス調の予感を期待させながら、謎は謎のまま少し調子の狂った日常が進められる。
原子力発電所の操業停止による補償金で暮らす金子たちは、その制度を巧く利用して碌に仕事もせず適当に暮らしているという社会的な矛盾と、しかし尚、放射能の被害に怯えて過敏になった神経による閉塞感と焦慮という物語だ。
さらに児童虐待という、これも一つの大きな社会的テーマ。その二つのテーマを絡めて、緊迫した好舞台を展開する。
金子と若者の刃傷事件という暴力沙汰の舞台表現が、実にリアリティに溢れ、刃物を振り回しての大立ち回りは緊迫し、彼らの持って行き場のない、どうしようもない感情の爆発は、最前列の客席に座った僕には、いつ僕に向かって来るのかも知れないという恐怖さえ覚えたほどであった。
物語の進展といい舞台上で起きる現実感といい、全く目の離せない2時間であった。